渋谷のホテルが提案する、これからの“等身大の”社会貢献「ソーシャライジング」とは?

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多くの若者が集まる渋谷・原宿エリア。2箇所を結ぶ「キャットストリート」から1本外れた小道に、ひっそりと佇む建物がある。2017年5月に創業したTRUNK(HOTEL)だ。

渋谷のTRUNK(HOTEL)

TRUNK(HOTEL)は、利用者が自分らしく無理せず、等身大で社会的な目的を持って行動するという意味の「ソーシャライジング(Socializing)」をコンセプトとするホテルだ。客室数は全15室と小規模で、インテリアから客室のアメニティやミニバー、ストア、ラウンジやレストランまですべてちょっとした社会貢献につながるような工夫が施されている。

本記事では、5月に1周年を迎えたばかりのTRUNK(HOTEL)を実際に訪問して筆者が感じた、次世代の社会貢献のカタチについて紐解いていこう。

TRUNK(HOTEL)

TRUNK(HOTEL)ブライダル大手の株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(代表取締役会長:野尻佳孝)が運営するブティックホテル。宿泊施設のほか、レストラン、ストア、イベント会場、チャペル等を備えている。「“誰かのために” “何かのために”なりたい」、そんな想いを持つ人のための場所。
サイトURL:https://trunk-hotel.com/

「ソーシャライジング」って何だろう?

人と社会をつなげる社会貢献
ソーシャライジングとは、本来英語で「人付き合いをする」「社交的に誰かと交流する」ということを指すが、TRUNK(HOTEL)ではこれを「人と社会がつながる」ことだと捉えた。

社会のためになることをしよう、と考えたとき、思い浮かぶのは寄付や募金、河原のゴミ拾い、災害復興のボランティアなどだろうか。誰もが何かしら良いことをしたいと願う一方で、そういった慈善活動を日常に取り入れることの難しさも感じている。そこでTRUNK(HOTEL)が作り上げたのが、無理なく社会や人のためになる仕組みだ。

たとえば、喉が渇いたときにミネラルウォーターを1本買うこと。ラベルの裏側には、「この製品の売り上げの一部は、東京の森林保全運動に役立てられます。」と書いてある。

ミネラルウォーターのボトルに書かれたメッセージ

利用者にとっては、ホテル内の施設や提供される製品・サービスを通して、環境破壊や健康問題など社会で起こっている“何らかの問題”に気付くきっかけとなり、そんな問題の解決に取り組むプロジェクトを支援することができるのだ。

アイデアとしては、以前IDEAS FOR GOODでもご紹介した”すべてが地域社会への貢献につながる”ロンドンのGood Hotelにも近いかもしれない。

ストーリーのあるデザインと社会貢献

入口から入ってすぐに現れるラウンジ。ノマドワーカーが作業できるデスクもあり、コワーキングスペースのような雰囲気

入口から入ってすぐに現れるラウンジ。ノマドワーカーが作業できるデスクもあり、コワーキングスペースのような雰囲気

TRUNK(HOTEL)では、「ENVIRONMENT(環境)」、「LOCAL FIRST(ローカル優先主義)」、「DIVERSITY(多様性)」、「HEALTH(健康)」、「CULTURE(文化)」の5つのポイントを軸にした社会貢献を推進している。

ホテルのデザインの節々には、この5つのポイントがさり気なく表れている。たとえばラウンジの柱や壁は古くなった日本家屋の木材で作られており、バーのイスもワインのコルクを集めてアップサイクルしたものだ。

海外からの観光客が多く訪れる土地柄、館内にはインターナショナルな雰囲気がただよう。外国人の従業員も多く、ベジタリアンメニューの提供やバリアフリー設備などさまざまな「多様性」が大切にされているのだ。

しかし一方で「ローカル優先主義」を掲げるだけあって、館内のデザインはすべて日本人のアーティストやクリエイターが手がけており、商品づくりやレストランのメニューにもローカル性が反映されている。

宿泊だけでなく、パーティー等にも利用できるテラススイートルーム

宿泊だけでなく、パーティー等にも利用できるテラススイートルーム

白と黒と基調としたシンプルなデザインのアメニティにも、作り手のこだわりは宿っている。

ロゴ入りのマグカップ。全国各地から回収された食器類を粉砕し、陶磁器の生地の原料となる「坏土(はいど)」として再生させたもの

ロゴ入りのマグカップ。全国各地から回収された食器類を粉砕し、陶磁器の生地の原料となる「坏土(はいど)」として再生させたもの

「人にも環境にも良い」シャンプー。

「人にも環境にも良い」シャンプー。静岡の国産ハーブを原料とした、メイドインジャパンのオーガニック製品

他にも、部屋で使うルームサンダルは、サンダル工場で出た端材ゴムをアップサイクルしたビーチサンダルとなっている。ホテルでよくある紙のスリッパとは違い、滞在後も持ち帰って普段使いできるデザイン性や機能性にこだわったようだ。

このように、一つ一つのデザインの奥にはストーリーが込められており、どのプロダクトも地域の生産者とコラボレーションしてこだわり抜かれた逸品なのだ。

しかし決して説教くさく「環境に良いから使おう!」と主張するわけでもなく、社会貢献というテーマを抜きにしても、デザイン性に優れており便利なことが特徴だ。その結果、ルームサンダル一つとっても、ごく自然な欲求として「今後も大切に使おう」と思わせてくれる。

無理なく続けられる社会貢献のカタチを考える

特別にセレクトされたモノだけが揃うストア

特別にセレクトされたモノだけが揃うストア

TRUNK(HOTEL)では、慈善団体への寄付を利用者から直接募ることはしないという。あくまでゲストの普段のライフスタイルのなかで社会貢献につながるソリューションを提案している、というのが彼らの取り組みの粋なところだ。日本でチャリティーや慈善活動の文化がさらに広がるようになるには、これくらい手の届きやすい方法が必要なのかもしれない。

特別な日には美味しいディナーを食べたい。オシャレなデザインのTシャツが欲しい。使い心地がいいタオルを買いたい。これらの気持ちを行動にうつすことが、実は社会のためになっている。そこに心理的なハードルは感じられず、もしかしたら社会貢献をしているということすら忘れているかもしれない。

意識しない社会貢献を

TRUNK(HOTEL)を一巡して感じたこと。それは、“社会貢献”と“グッドテイスト”が共存する強みだった。ホテルのあちこちに「この売上は●●という団体に寄付します」「この製品にはこんなストーリーがあります」と書かれたサインがあるせいか、自分のちょっとした消費行動が「意味のあること」だと改めて気付かされる。

日常のなかの何気ない選択をもっと意識しよう、そう思わせてくれる場所だった。

TRUNK(HOTEL)トランクホテル

住所:東京都渋谷区神宮前5-31
東京メトロ「明治神宮前駅」から徒歩6分、「渋谷駅」から徒歩7分
Webサイト:https://trunk-hotel.com/
宿泊客でなくてもレストラン、テラススペース、ストア、ラウンジなどは利用可能。

渋谷のTRUNK(HOTEL)

(※画像・情報提供:TRUNK(HOTEL)

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