年齢や国境を越えて楽しむことができ、私たちのココロもカラダも健康にしてくれるスポーツは、まぎれもなく人類が生み出した偉大な発明の一つだ。
しかし、私たちがスポーツを通じて健康になっていくのと引き換えに、地球の健康が失われているとしたらどうだろう。実際に、世界全体の市場規模が100兆円を超える巨大産業でもあるスポーツは、人々にたくさんの夢や希望を与えてきた一方で、大きな環境負荷を生み出してきた。
私たちが体を動かすときに身につけるスポーツウェアやシューズ、ボールやラケットといったスポーツ用品、プレイするために建設されたスタジアムにいたるまで、人々がスポーツを楽しむために、多くの資源が使われ、廃棄されているのだ。
この問題の解決に向けていち早く動き出し、いまや環境への取り組みをイノベーションの原動力へと置き換えている企業がある。それが、世界を代表するスポーツブランドの一つ、「ナイキ」だ。
多くのアスリートに愛され、その革新的なデザインや機能性の高いアイテムでスポーツアパレルの歴史を切り拓いてきたナイキが、実はサステナビリティの分野でも世界をリードする先進企業であることはあまり知られていない。
ナイキは過去30年にわたって環境負荷の削減に取り組み続けた結果、現在ではなんと同社の製品の75%に再生素材が利用されるまでになった。今や、ナイキは業界のなかで最も多くの再生ポリエステルを使用している企業でもある。プラスチックボトルの製造工程で発生する廃材や使用済み製品はNike Grindなどの新たな素材へと生まれ変わり、糸やシューズのソール、バスケットボールコートなど、ナイキが作る多くのプロダクトの一部となっている。
ナイキを象徴するサステナブルなイノベーションの一つと言えるのが、同社の代表的なプロダクトとも言えるシューズ、ナイキエアだ。シューズの底面に圧縮した空気を入れることで空中を歩いたり走ったりするような感覚を生み出しているナイキのエアソールは、そのアイデアの革新性もさることながら、同社のサステナビリティに関する英知を結集して作られている機能でもある。
エアソールの染料着色工程の一つでは、染料を含んだ回収可能な排水の99%が再利用できるようになっているほか、2008年以降にデザインされたすべてのエアソールの少なくとも50%の原料が、生産工程で発生する廃材を再利用したもので構成されている。
例えば新しいナイキエアマックス270のエアソールの場合、実に70%以上が生産工程からの廃材を再利用した材料でできている。
また、アメリカ国内に6箇所あり、ナイキエアの製造を担っている「ナイキエア・マニュファクチャリング・イノベーション」の各工場では、施設の生産工程で発生する廃材の95%以上が埋め立て処理することなく再利用されている。これは2016年5月から2017年までの間だけでも2300万kg分もの素材に相当する量だ。
このように、ナイキが世に送り出すクールで新しいプロダクトの原材料には、生産工程で生み出された廃材が多く利用されているのだ。ナイキシューズのシンボルでもあるエアソールの本当の革新性は、その機能ではなくサステナブルな生産工程にあると言っても過言ではない。
他にも、同社は2019年までに北米の拠点で100%再生可能エネルギーを実現するという目標を掲げるなど、環境への配慮とサステナビリティを事業の原動力に据え、スポーツアパレルの新しいあり方を世の中に示している。
どんなスポーツにもプレイをするフィールドが必要だが、ナイキにとっては地球そのものが同社の大事なフィールドなのだ。地球の資源なくしては製品を作ることはできないし、綺麗な空気がなければスポーツは楽しんでもらえない。海が汚れればマリンスポーツはできないし、異常気象が続けば人々は体を動かすことを諦めるかもしれない。地球というフィールドを守ることは、ナイキのビジネスを守ることでもあるのだ。
どうせスポーツを楽しむのなら、自分だけではなく地球ももっと健康に。そんな気持ちで汗を流したい人には、ナイキのウェアやシューズが似合うはずだ。