綿の代わりに「ポプラ」を。スウェーデンの研究者が提案する、衣服づくりの新時代

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衣服やコスメに使われるコットン(綿花)。最近ではオーガニックコットンを使ったアパレルブランドが続々登場するなど、私たちにとって身近な存在だが、その製造過程を知っているだろうか。

グローバルな研究ネットワークの「Anthropocene」が発行するウェブマガジンによると、わずか1トンの綿を生産するのに、2,955トンもの水が使われるという(※1)。また、世界では、コットンを生産するためだけに3,450万ヘクタールという広大な農地が使われている。

そんななか、スウェーデン農業科学大学などの研究者は2022年8月、コットンの代わりにポプラの木から得られる繊維を使って、布を作ることを提案した。

これにより、環境負荷が軽減されると共に、フードセキュリティ(食料安全保障)の確保に貢献する可能性があるという。一体どういうことだろうか。

まず大きいのが、コットンを育てるために使っている農地を、食料生産のために使えるようになる点だ。世界的な人口増加や気候変動など、さまざまな要因によって食料供給に影響が及ぶと考えられるなか、食料生産の増大を図れることはメリットと言える。

「ポプラを育てる場合も、多くの土地を使うのでは?」と疑問に感じる人がいるかもしれない。研究者らは、一般的に農業生産性が低いという特徴を持つ「マージナルランド(限界土地)」でポプラを育てることを想定しており、本来他の用途で使えるはずの土地を切り開いて繊維の生産のためだけに使うことはないという。

研究者らが、スウェーデンやポーランドなどを含むバルト海地域で、ポプラを育てるのに適したマージナルランドを調査したところ、460万ヘクタールもの土地が見つかった。ここでポプラを育てるとすると、これまでコットンを生産していたバルト海地域の土地の42%を、他の用途で使えると推計されている。

また、ポプラはコットンほど多くの肥料、化学物質、水を使わなくても育つという特徴がある。ポプラは成長が早いためCO2を早く蓄積できるうえ、枝や樹皮を発電用の燃料として活用できるというメリットもある、とAnthropoceneは述べる。

ポプラから作る、より環境負荷の少ない布はいかがだろうか。この素材を使った、服の着心地が気になる。

※1 Making clothes from trees brings an unlikely win-win for food security and the environment
【参照サイト】Lignin-first biorefining of Nordic poplar to produce cellulose fibers could displace cotton production on agricultural lands
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