自然界に無駄はない。オランダ人アーティストが牛のフンから服をつくる

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EUは、肥料として使われる家畜の排泄物が水質汚染を引き起こすことを問題視している。特定の地域では家畜の排泄物から出る窒素量に上限を設けるといった対策が講じられているが、オランダのような酪農国では規制をくぐり抜けようとする人もいるようだ。過剰生産に課される罰金を逃れるために排泄物の闇取引がおこなわれているという報告もあがっている。

酪農国オランダとしても、規制を設けて業界の成長を妨げることはしたくない。肥料に限らず、より排泄物の用途が広がれば水質汚染の懸念も少なくなるだろう。排泄物はバイオエネルギーや紙としての使い道も有力だが、オランダ人アーティストであるJalila Essaïdi氏は牛糞から衣類を作る活動をおこなっている。

Essaïdi氏はすでにアイントホーフェン市内にある15の農家と手を組み、牛糞の精製所を作ろうとしている。彼女によると牛糞から抽出されるセルロースには牛が食べる草とトウモロコシのみが含まれ、このセルロースを加工することで服の素材ができるという。この方法なら牛の胃の中で繊維が柔らかくなるため、あとから繊維に圧力をかける必要がなく、エネルギー効率が良いそうだ。

Essaïdi氏のこの革新的な取り組みは、スタートアップ企業への投資を行うChivas Ventureやアパレル大手H&MのH&M財団からも評価され、それぞれにおいて賞金を獲得している。H&M財団のPRを担当するMalin Björne氏は、「私たちは毎年、地球約1.6個分の資源を消費しています」と危機感を表明し、「ファッショニスタであるか否かに関わらず、時には型破りな素材を使うことに慣れていかないといけません。たとえば、綿が常にあるとは限らないのですから」と語る。

汚くて臭い牛糞がきれいな布地に変わるのを見ると、排泄物もまったくの無駄ではないのだとわかってくる。加工されたセルロースの美しさを力説するEssaïdi氏は、2016年にファッションショーを開催済みだ。オランダのテレビ局がこの布地は臭わないのか検証したことがあるが、道行く人のなかには「身に着けるのに抵抗は感じない」と肯定的な回答をした者もいた。

いやいや、それでも・・・と疑いが拭えない神経質な人もいそうだが、そういう反応もあるのがこの布地の面白さだと思う。普通でないからこそ惹きつけられる、いい意味でのいかがわしさや怪しさがある。それはファッションのような芸術の世界では欠かせない要素であり、服をとおして生命の神秘を表現することにもつながっていると思う。

【参照サイト】Mestic

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