新型コロナウイルス感染症の流行を受け、感染を予防するための消毒剤の需要が高まっている。しかし消毒剤の容器は、ほとんどの場合プラスチック製だ。消毒剤を含む液体製品の多くは、プラスチック素材の容器が使用されていて、買い換えるたびに使い捨てプラスチックが発生するという問題がある。
そんな中、今春、ニューヨークを拠点とするパーソナルケアブランドのby Humankindがプラスチックフリーのハンドサニタイザーの販売を開始し、注目を集めている。
by Humankindは、日常の使い捨てプラスチックごみを減らすことを使命に掲げるブランドで、これまでにもプラスチックフリーの固形シャンプーや固形石鹸、詰め替え可能なデオドラント、生分解性の綿棒などを販売してきた。
そしてコロナ禍の今春、プラスチックフリーのハンドサニタイザーを商品ラインナップに追加したのだ。容器には、プラスチックの代わりにアルミニウムを使用している。サイズは8オンス(236.6 ml)と持ち運ぶにはやや大きいため、持ち運ぶ際には手持ちのプラスチック容器等に詰め替えて使用することを推奨している。そうすることで、通常は捨てられていたプラスチックに、新しい命を与えることができる。
さらに、このハンドサニタイザーを購入すると、新型コロナウイルス感染症の流行で被害を受けたニューヨーク市民を支援しているロビンフッド財団の救済基金に1ドル寄付されるというのも、注目ポイントの一つだ。
プラスチック素材をやめてアルミニウム素材に替えることで得られるメリットはリサイクルの面を見るとわかりやすい。
日本におけるプラスチックのリサイクル率は27%(2017年)。また、プラスチックはリサイクルしても回数を重ねる度に劣化してしまう(厳密に言うと、マテリアルリサイクル(再生利用)は品質が劣化し、廃プラスチックを分子にしてから作り替えるケミカルリサイクルは劣化はしないが大量なエネルギーを要する)。
それに比べてアルミ缶はリサイクル率が93.6%(2018年)、アルミニウムは少ないエネルギーで何度でもリサイクルでき(リサイクル原料由来のアルミニウムは、天然資源由来で製造するアルミニウムの約3%のエネルギーで済む)、再生品の品質が新品とほとんど変わらないという。
アルミニウム製のハンドサニタイザーは、環境に配慮しながらウイルス感染予防ができる、今まさに必要とされる商品だ。今後は消毒液だけでなく、使い捨てプラスチックが使用されている多くの日用品に、アルミニウムなどの代替素材の容器という選択肢が広がっていくことを期待したい。
【参照サイト】by Humankind
【参照サイト】アルミ缶リサイクル協会
【参照サイト】一般社団法人 プラスチック循環利用協会