寒天由来のバイオプラスチックでできた、自然想いのランプシェード

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「キッチンにある自然のもので、衣服やテキスタイルをつくれないだろうか」

ニューヨーク在住のアーティスト兼テキスタイルデザイナー・Yi Hsuan Sungが、そう考えるようになったのは大学生のときだった。東アジアで昔から使われていた衣類の仕上げ法である、「米のり」を使った布の接着方法を知ったのだ。米は加熱して潰すと粘り気が出て、丈夫なのりとして使えるようになる。

それがきっかけで、彼女はさまざまな自然由来の素材を使い、自然の美しさを模したインテリアやファッションアイテムの制作に取り掛かるようになった。そんな彼女の作品の一つが、寒天由来のバイオプラスチックでできたフローラル・ランプ・シェード(ランプや電灯の笠)だ。このランプシェードのパーツはすべて寒天ベースのバイオプラスチックからできている。

ランプシェードの基盤となる部分は、毛糸状の寒天プラスチックをベルのような形に編み上げたもの。そこに、寒天プラスチックでできた「寒天フラワー」を、毛糸状の寒天プラスチックで編みつけてデコレーションしている。

寒天フラワーランプ

寒天フラワーは、3Dプリンターでつくったオリジナルの型を使用してつくった花弁を、一つ一つ組み合わせて作り上げている。

材料となるバイオプラスチック素材は、紅藻から抽出した寒天にグリセリンと水を混ぜたもの。柔軟性と強度があり、成形次第で毛糸状やシート状などさまざまな形にすることができるのが特徴である。

また、寒天プラスチックは水を加えて熱することで液状の素材に戻すことができるため、何度でも新しい形に作り替えることができる。ミスをしたときや端材が出たときでも再利用できるため、ごみを出さずに使い切るものづくりに役立ってくれるのだ。

寒天フラワーランプ

彼女は、素材だけでなく染色の仕方にもこだわっており、寒天プラスチックの着色には、オレンジの皮、玉ねぎの皮、アボカドの種、ニンジンの葉、腐ったベリーなどの食品ロスを使っているのだという。

寒天フラワー

花弁の端の波打つような形や筋模様は、成型時に水分が抜ける過程で生まれたもの。彼女はこの現象を「バイオスカルプチャー(生命の彫刻)」と読んでいる。

化石燃料由来のプラスチックや、ケミカルな染料を使うこともできる。その方が、作品づくりの一つひとつの工程にも手間がかからないかもしれない。しかしYi Hsuan Sungの「自然の要素を家の中に持ち込みたい」という想いには、日常のなかに溢れすぎた石油製品、化学製品から少しでも脱したいという願いも含まれている。彼女は自然由来のサステナブルな素材を使いながら、もっと無害で、スローで、マインドフルな繊維製造ができることを作品を通して伝え続けている。

【参照サイト】Yi Hsuan Sung
【参照サイト】Yi Hsuan Sung Instagram
【参照サイト】Agar Illuminated(American Craft Counsil)

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