循環型都市のヒーローはミミズ!オランダの「ワームホテル」にみるサーキュラーなまちづくり

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「ワームホテル」と聞くと、何を想像するだろうか。幼虫が旅の疲れを癒やしに来る場所だろうか。オランダ・アムステルダムの「ワームホテル」とは、幼虫たちが地元の生ごみ、つまり有機性資源を迎え入れる、有機性資源を循環させるためのコミュニティ・コンポストのことだ。アムステルダムでは、このコミュニティ・コンポスト「ワームホテル」を起点とした循環するまちづくりを進める。

The Netherlands Nutrition Centre Foundationが2019年に発表した調査結果によると、アムステルダム市では、2019年に住民1人あたり34.3 kgの食品が廃棄され、そのうちほとんどが可燃ごみとして捨てられ、焼却・埋立処分されていた。市としては生ごみの定期回収を行っていないものの、食と有機性廃棄物はアムステルダムのサーキュラー都市戦略のなかで一般消費財、建築に並ぶ重点分野に位置づけている。

本来ならばごみではないはずの有機性資源を廃棄し続けている現状に疑問をもった住民たちと市の職員がボトムアップでたどり着いたのが、「ワームホテル」の取り組みだ。

Wormenhotel

Wormenhotel

Image via Wormenhotel

ワームホテルは高さ約2メートル。鐘状で、耐久性のあるエコ素材でつくられている。一軒あたり数kgのミミズが暮らしている。住民は有志で手を挙げればワームホテルの支配人になることができ、そこに近所の人が生ごみを持ち込み、虫たちがおいしく食べて分解し、豊富な養分を含む土に還す。今度は地元住民たちでこの土を分け合い、肥料として活用するという仕組みだ。ごみ問題を解決し、資源を循環させるための街のヒーローに、ミミズが大抜擢されたというわけだ。

ワームホテルに持ち込めるものは次の通り(ウェブサイトより)。

持ち込み可

  • 加熱調理していない果実や野菜、皮、ティーバッグ、コーヒーかす、卵の殻などの家庭生ごみ
  • 細く裁断したダンボール、紙製の卵パック、キッチンペーパー
  • ガーデニングから出た植物などのごみ
  • ハムスターやモルモットなどの草食の小動物のふん

持ち込み不可

  • パスタ・パン
  • オイル、ソース類
  • 加熱調理された食品
  • 犬や猫などの肉食のペットの糞尿
  • ガーデニングから出た、丸太など大きなごみ
  • マーケットなどで購入した花類のごみ(庭の草木花は持ち込み可)
アムステルダム市内のWormhotel。写真は筆者撮影

アムステルダム市内のWormhotel。写真は筆者撮影

都市に自然をもたらし、地元住民への資源循環の教育機会を提供し、さらには地域コミュニティの形成・強化に向けた基盤になると期待される。

アムステルダムのワームホテルはごみを減らし、土壌の質を向上させるという環境的メリットに加え、次の社会的メリットがあるという。

  • 廃棄物の循環やサステナブルな生活に人々の目が向くこと・近隣住民とのつながりを強く実感できること
  • 障害のある人を含む地元での雇用に寄与すること
  • 市行政として、住民が生ごみ分別に対して前向きであるという実感を得ることができたこと

アムステルダム市内だけでも現在200軒ほどのワームホテルに、1500世帯が生ごみを持ち寄る。現在さらに300人の住民がワームホテルの支配人に名乗り出ており、市の対応が間に合っていないほどだ。

Wormhotelマップ

Wormhotelマップ

世界の都市でもコンポストの重要性が広く認識されており、取り組みは一層進みそうだ。

有機性資源を分解してくれるミミズなどの幼虫の住む場所を、遊び心たっぷりに「ワームホテル」という言葉で表現して取り組むアムステルダム市。アムステルダム市のサーキュラーなまちづくりに今後も注目したい。

【参照サイト】ワームホテルウェブサイト
【参照サイト】調査結果「Synthesis report on Food Waste in Dutch Households in 2019」:
【関連記事】アムステルダム市が公表した「サーキュラーエコノミー2020-2025戦略」の要点とは?

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Circular Economy Hub」からの転載記事となります。

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