対話が始まるデンマーク式コミュニティカフェ、東京・世田谷に誕生

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東京都世田谷区・古い街並みの残る東松原に「湖畔のカフェ」が登場した。もちろん本当に湖があるわけではないのだが、まるで湖畔で過ごすような心地よさを感じる場所だ。

コミュニティカフェ「はぐくむ 湖畔(以下、kohan)」は、食と学び、そして対話という三つの要素をかけあわせるカフェとして株式会社はぐくむが作り出した空間である。昼はランチの提供、夜は「コミュニティディナー」と呼ばれるディナーを開催する場として2020年10月20日からスタートし、段階的にワークショップや展覧会などさまざまな機能をオープンしていく。

本記事では、IDEAS FOR GOODが訪れて感じたカフェの魅力である「コミュニティ」「ローカリゼーション」「デザイン」の三つの要素について、順を追って紹介していく。

はぐくむ湖畔_外観

自由につながるコミュニティ

はぐくむ が大切にしている考えの一つが、「自由な共生」である。お互い過度に干渉しあうのではなく、かといって都会で隣人を誰一人知らない、と孤立するわけでもなく、まわりの人と対話し、ゆるくつながりながら東松原の街での暮らしをより豊かにすることだ。

カフェでは、18時から予約制のコミュニティディナーが行われる。コミュニティディナーとは、知らない人同士がテーブルを囲み、家庭料理をシェアしながら団らんする企画である。一人で参加してもいいし、家族や友達と参加してもいい。はぐくむスタッフによる、対話のファシリテーションも行われる。

この企画は、デンマーク・コペンハーゲンにある、教会を使ったコミュニティキッチン「Absalon(アブサロン)」からインスピレーションを受けている。Absalonは、その時間その場に居合わせた人たちが8人1テーブルで大皿を囲んで食事をし、思い思いに語りあい、つながりあう場だ。誰かが孤立しないよう、場の運営方法も空気感もつくられている。

年齢も性別もバックグラウンドも異なる人たちが、ローカルなカフェの同じテーブルで発酵食や有機米をつかった家庭料理を食べる。その空間には多様な視点と、一期一会の出会い、そして自由に共生するためのつながりが生まれる。

シェフとの対話

シェフとの対話

東松原で目指すローカリゼーション

はくぐむは、kohanの事業を通して東松原の街のインフラづくりもしていきたいと考えている。街に魅力を感じ、港区・表参道からオフィスごと引っ越してきたのだ。

カフェでは、ランチ・ディナーの営業のほかに、お花やオーガニック食品の物販、そして地元の家族が参加できるような子供向けワークショップ、親子向けワークショップなども行われる予定だ。近くに住んでいる人、通りがかった人、街づくりに興味がある人など、さまざまな人がkohanに関わることのできる仕掛けをつくっている。

また、共感コミュニティ通貨「eumo(ユーモ)」のシステムをつかった地域通貨の導入も検討している。これは、kohanだけでなく東松原のローカルな商店街でも使える地域通貨で、過去にはぐくむが主催した地域のお祭りで何度か実証実験も行われた。

kohanの設計・デザインの面でもローカリゼーションは徹底されている。空間づくりを手がけたのは、kohanと同じ東松原の通りに事務所を構える坂茂(ばんしげる)建築設計だ。

柔軟に形を変え、廃棄の出ないデザイン

坂茂氏が設計したカフェの内観や家具には、紙管(再生紙でできた管)がふんだんに使われている。天井につけられた吸音材としてのカラフルなパネルや、壁、間仕切りなどにつかわれる紙管は柔軟で、いつでも取り外しが可能だ。

はぐくむ湖畔_内部

2014年にアメリカのプリツカー賞(※1)を受賞した坂氏はこれまで、紙の家や、避難所の間仕切り、紙のハニカムベッドなど、さまざまなものを紙でつくってきた。一見破れやすそうで弱い素材に見える紙だが、板氏のこれまでの建築では強度は木材と変わらず、そして建物が使われなくなったときに他のものにリユース・アップサイクルできるという利点がある。まさに、オランダなどで見られるような「壊すときのことも考えてつくられたサーキュラー建築」の一例となっているのだ。

これからkohanは、はぐくむ主催のイベントや、アーティストによる展覧会、プロ講師による各種講座、ワークショップが行われる場や、コワーキングスペース、レンタルのイベントスペースなど、形を変えていく。照明や電気のコードも付け外しが簡単なので、催しによってはまったく違った空間になるだろう。

坂さん_説明

板氏:今回の設計では、完成したデザインではなく、場面によって柔軟に変えられるような「システム」をつくりました。この東松原の通りに、そういう紙管の設計が増えていけばいいなと思っています。

※1 プリツカー賞:アメリカのホテルチェーン「ハイアットホテルアンドリゾーツ」のオーナー、プリツカー一族が運営するハイアット財団による建築賞。建築家にとってのノーベル賞ともいわれている。

まるで湖畔にいるような時間が過ごせるカフェ

kohanの魅力はまだまだある。ランチで提供する3種類の食事メニューには、有機米や手作りの調味料を使用しており、発酵食を通じて免疫力を高めることもできる。その他にも、花とコーヒーのサブスクリプションサービスを販売予定だ。

現在、オープン記念のキャンペーンも行われている。kohanを訪れた人がSNSで #hagukumukohan のハッシュタグをつけて投稿し、はぐくむメンバーが投稿の中から最もインパクトのあったものを選ぶ。選ばれた人には、kohanのコミュニティディナーの1か月のサブスクリプションがプレゼントされるようだ。

食、学び、対話が同時に楽しめるkohanに、一度足を運んでみてはいかがだろうか。

黒板アーティスト 三好修平さんの作品

黒板アーティスト 三好修平さんの作品

はぐくむ 湖畔の詳細
施設名 はぐくむ 湖畔
住所 東京都世田谷区松原5-2-2 prendre ys 1F
営業時間 9:00~22:00(コミュニティディナーは予約制)(※2)
席数 20席
定休日 不定休
URL https://hagukumukohan.com/

※2 以下、オープン予定
10月26日~ 11:30~20:00 ランチ&カフェ&ディナー営業(ディナー営業開始)
11月2日~ 9:00~22:00 ランチ&カフェ&ディナー営業(朝の時間帯営業開始)
11月9日~ 9:00~22:00 フル営業(BAR営業開始)

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