スペイン・アンダルシア州の州都であるセビリアには、48,000本ものオレンジの木が生えている。約1000年前にスペインにもたらされ、地域に根付いたというオレンジだが、地元の人たちは苦いオレンジをあまり食べないそうだ。オレンジの多くはイギリスに輸出されてマーマレードに使われたり、自治体が集めて埋立地に送られたり、地面に落ちてつぶれたりしている。
そんな中でセビリアは、オレンジが発酵するときに生じるメタンからクリーンエネルギーを生成する取り組みを、試験的に始めている。最初の計画では、地元の水道事業者である「Emasesa」が35トンのオレンジからクリーンエネルギーを生成し、浄水場を動かすのに使うという。そしてゆくゆくは、家庭に電力を供給することも視野に入れている。
技術者の計算によると、1トンのオレンジから50キロワットアワーの電力を生成でき、これは5世帯の1日分の消費電力に相当するという。そしてセビリアのすべてのオレンジから電力を得ると、73,000世帯に電力を供給することが可能になる。CO2を排出せずにエネルギーを生成し、廃棄物を資源として利用するサーキュラーエコノミーにも貢献する、環境に優しい取り組みだ。
また、市はオレンジを収穫するために200人を雇用しており、新規雇用の創出にも取り組んでいる。さらに、オレンジのエネルギー生成に利用できない部分はコンポスト化して肥料にし、地域内で使用するという。
セビリア市長のフアン・エスパダス・セハス氏は、同プロジェクトの記者会見で「Emasesaはサステナビリティおよび気候変動対策に関する、スペインのロールモデルです」と語っている。今回新たに投資する浄水場では、市内に飲料水と衛生設備を提供するのに必要なエネルギーの40%近くを使っている。オレンジから作ったエネルギーで浄水場を稼働させることができれば、家庭に電力を供給するという、次のステップへの弾みになるだろう。
セビリアでは毎年1月と2月にオレンジを収穫し、3月~4月にはオレンジの白い花が咲くという。今年はもう収穫が終わった時期だが、オレンジはクリーンエネルギーになって活躍しているだろうか。
【参照サイト】 Emasesa
Edited by Erika Tomiyama