糞尿が列車を動かす。地域に合った技術から循環を生む、英のプロジェクト

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先進各国がガソリン車の将来的な廃止を決定し始めるなど、「持続的な発展」や環境に優しいエネルギーに注目が集まっている。消極的だった米国も、トランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」にバイデン政権が復帰を決めた。世界での動きはさらなる加速が見込まれる。

そんな中、イギリスのバーミンガムで面白い試みが進んでいる。人々の食べ残した生ごみ、ヘドロ、動物の糞尿などを燃料にして列車を走らせる「Bio Ultra」プロジェクトだ。

bio ultra

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ロンドンから北へ約160キロメートル(東京から軽井沢ほど)に位置する大都市バーミンガムを中心とする「ウエストランド都市群」は、人口約280万人を抱える一大行政区。この280万人の足を支える鉄道網を、採算が取りづらい支線を中心に、環境に優しくかつコストパフォーマンスの良い新たな鉄道で繋げようというのが「BioUltra」プロジェクトである。

計画を進めているのは、バス、自動車や従来の鉄道に変わる代替交通手段を模索している「Ultra Light Rail Partners」。バスのようにドアtoドアで移動できる“環境に優しい鉄道”としてイギリス全土に普及を目指している。

同社ホームページなどによると、最大時速は80キロメートル。敷設コストは地下鉄に比べると20パーセント、地上車両と比べても50パーセントで済む。定員は最大約120人を想定しており、日本の街中を走る市バス(定員が約60人)の2台分くらいだ。車両重量も従来の50パーセント程度に抑えてあり、軽い。車内の空気を紫外線ランプで殺菌するほか車内にアクリル板を常設するなど新型コロナウイルスに対応した安全安心面での工夫もこらされている。

英政府は、2040年までにディーゼル燃料のみで走る列車を廃止する方向性を打ち出しており、同プロジェクトは、開発実装に向けて英政府のファンドなど資金調達が進んでいる。早ければ2021年中にも実際に街中を走行する姿が見られる予定だ。

bio ultra

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同様の列車は、2005年にスウェーデンで実証実験がされており発想自体は新しいものではないが、「安く、小さく、手軽に、環境に優しく」という“発想のパッケージ”が新しいと言える。

運営する「Ultra Light Rail Partners」の会長でバーミンガム・シティ大学内の研究機関「IDEA(The Institute for Design and Economic Acceleration)」のエグゼクティブ・ディレクターであるビバリー・ニールセン氏は、「intermediate technology(程よい技術)」という概念を強調する。

ハイスペックすぎず、ローテクでもない。地域の身の丈に合い、根本的な課題解決に役立つ「程よい技術」こそが、循環型経済を作る上では重要だという。ニールセン氏は、自転車やミシンなどを代表例として挙げながら、「程よい技術」こそが世界を変えつつあると自身のブログで記している。

最先端の技術を詰め込んだハイスペックなソリューション・製品・サービスを作ることに長けている日本。生ごみと動物の糞尿で列車を動かす「Bio Ultra」のアイデアからはもちろん、「程よい技術」という思想からも学べることはあるかもしれない。

【参照サイト】ULRP
【参照サイト】Train powered by Organic Waste led by Ultra Light Rail Partners and BCU’s IDEA Institute
【参照サイト】UK to phase out diesel-only trains in UK by 2040 – FT
【参照サイト】世界初のバイオガス列車運行(スウェーデン)
(画像:Ultra Light Rail Partnersより)

Edited by Tomoko Ito

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