アメリカのEC専門メディア「Digital Commerce 360」の推計によると、同国では2020年のネットショッピングの支出額が、前年比44%増の8600億ドル(約93兆円)に達したという。これは過去20年間の中で最も高い成長率であり、2019年の前年比15%増と比べるとその大きさがわかる。
新型コロナウイルスの感染拡大は、外出しなくても買い物ができるネットショッピングの普及を後押ししているが、それとともに急増するのが、段ボールなど配達後に出る梱包材のごみだ。また、配送回数が増えるとCO2排出量も増加してしまう。梱包材のごみを減らし、配送回数を抑えられる仕組みはないだろうか。
アメリカのスタートアップ企業である「Olive」は、消費者がオンラインで注文した様々なブランドのアパレル商品を再利用可能な箱にまとめて、週1回配達するサービスを提供している。同社はアディダス、ラコステ、マイケル・コースなど100余りのブランドとパートナーを組んでおり、消費者はその中から好きなサイトで買い物ができる。
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Oliveの使い方は簡単だ。事前にOliveのiOSアプリをダウンロードするか、Chromeに拡張機能をインストールしておけば、注文時にOliveの配送先住所が自動入力される。あとはOliveの施設で商品がまとめられ、家に配達されるのを待つだけだ。各ブランドがOliveの施設に商品を送るときは通常通り梱包が行われるため、梱包材のごみが完全になくなるわけではないが、少なくとも消費者はその処理に悩まなくて済む。また、Oliveは各ブランドと協力し、ゆくゆくは梱包材を完全になくしたいと考えている。
Oliveは返品の手続きが簡単である点も、消費者にとって魅力的だ。アプリなどで事前に返品リクエストを送り、同じ箱に返品する商品を入れて玄関先に置いておくだけだ。返品する商品がない場合は、空の箱を置いておけばいい。いずれの場合もOliveが箱ごと回収し、その後の処理を行ってくれる。Oliveを利用しても追加料金はかからず、通常の配送料を支払うだけでいいため、環境問題に特別熱心ではない消費者も惹きつけることができそうだ。
Oliveは週1回の配達という仕組みを取り入れ、配送回数を抑えているため、一刻も早く商品を届けようと競い合う世界では優位に立てないかもしれない。しかし創業者のネイト・ファウスト氏は、TechCrunchの取材に対し「消費者は他に優れた点があれば、多少配送日数が長くなることを厭わないだろう」と答え、配送スピードばかりを重視しない姿勢を示している。同社がまずアパレル商品の取り扱いを始めたのは、他の商品ほど迅速な配達が期待されていないと考えているからだ。
ネットショッピングでたまる段ボールの処理が面倒だと感じている人や、試着を重ねて似合う服を見つけたい人などにとって、Oliveはちょっとした手間を解決できるサービスだと言えるだろう。
【参照サイト】 Olive – Online shopping unboxed (shopolive.com)
【参照サイト】 Olive offers a more sustainable e-commerce experience – TechCrunch
Edited by Erika Tomiyama