新型コロナへの感染リスク、日々の忙しさ、いつの間にか症状がおさまったなどの複合的な理由により、医療機関への通院を控えている人は少なくないのではないだろうか。
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社が2021年11月に行った調査によると、30%の人が、体調不良時に病院での受診を延期もしくは一時控えたと回答。
この理由について、「控えた時の自身の体調や症状よりも、コロナの感染リスクの不安が大きかったから(45.2%)」と答えた人が最も多く、「まだ病院に行かなくても大丈夫だと思ったから(28%)」、「症状がおさまったから(13.5%)」、「自己負担の費用がかかり、経済的に負担を感じるから(8.3%)」と答えた人もいた(※1)。
人それぞれ様々な事情があるが、病気の早期発見が治療の選択肢を広げることも、忘れないようにしたい。
米ペンシルベニア州フィラデルフィアに拠点を置く企業Fabric Healthは、忙しい人がよく訪れるコインランドリーで医療サービスを提供し、誰もが医療にアクセスしやすい環境を作ろうとしている。
Fabric Healthによると、アメリカでは毎週3,200万人がコインランドリーを利用。人によってはそこで2時間も、洗濯から乾燥まで待つことになる。同社は、この時間を有効活用したいという理由から、コインランドリーをサービスの提供場所に選んだ。
同社が提供するサービスは、血圧チェック、がん検診、医療保険への加入支援、低所得世帯の食費を補助する「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」の申請支援など様々だ。乳がん検診に使うマンモグラフィーを持ってきたり、「糖尿病の薬を買う余裕がない」と話す人の保険プランをチェックして手頃な価格の薬を見つけたりと、様々な悩みや不安に細やかに対応している。
活動を通して、人々の家庭内役割の状況やストレス要因なども把握するようになったというFabric Healthは、コインランドリーを利用する人たちとの心理的な距離を縮めることを大切にしている。たとえば、まずは洗濯物を運ぶのを手伝ったり、コインランドリーの無料券をプレゼントしたりして、そこから「健康に関する悩みはないか」と本題に入る。
同社はペンシルベニア州と協力してサービスを提供しており、今後はフィラデルフィアだけでなく、同州ピッツバーグでも活動を始めるという。2022年1月には、リチャード・キング・メロン財団から50万ドル(約5,800万円)を調達し、ピッツバーグに進出する費用に充てる計画だ。
コインランドリーに新たな価値を見出し、医療を届けにくい人たちとの接点を作った、Fabric Healthの着眼点は鋭い。このような取り組みを通して、地域で包括的に医療を提供する体制が整っていくといい。
※1 健康診断・人間ドック、がん検診等、医療受診に関する意識・実態調査
【参照サイト】 Fabric Health