もし、薬物中毒者を救えるモノが身近にあったら?アメリカの「くすり自販機」

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約270万台も自動販売機がある日本(※1)。この頃は、飲料自動販売機の他に、スイーツやラーメンなどユニークなものを売る自動販売機が誕生している。

そんななか、アメリカのオハイオ州にも、珍しいものを提供する自動販売機が現れた。なんと、薬物の過剰摂取の治療薬であるナロキソンを販売しているのだ。同州のシンシナティ大学が、非営利団体のCaracoleと協力して、自動販売機を導入した。

Image via Caracole

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アメリカでは2021年、10万7千人以上もの人が、薬物の過剰摂取で亡くなったという。この自動販売機は、過剰摂取による死亡を防ぐため、「ハームリダクション(被害の低減)」と呼ばれるアプローチを取っている。

ハームリダクションは、ある人が薬物の使用を中止できない場合に、当事者の健康被害を減らすことを主たる目的として行われるプログラムだ。たとえば、カナダには、安全に薬物を使うための注射器などを提供する施設がある。場所を限定して、違法な薬物の使用を許可しているのだ。

こうすることで、後ろめたい気持ちを持つ薬物使用者が、周囲に助けを求めやすくなるかもしれない。同施設では、薬物使用者の話を聴いて必要な支援につなげたり、彼らが危険な状態に陥ったときに迅速に対応したりしているという。

“ハームリダクション自動販売機”は、24時間365日利用できるのが特徴だ。自動販売機を利用したい人は、Caracoleに連絡して無記名アンケートに回答すると、機械を使うためのアクセスコードを取得できる。

シンシナティ大学の助教授であるダニエル・アーレント氏は、ハームリダクション自動販売機を設置する意義について、ニュースリリースで次のように語っている。

薬物をやめたいのであれば、私たちはその助けとなります。ですが、やめたくない場合、私たちはあなたを追い払って、助けることを拒否するつもりはありません。私たちはあなたと協力して、あなたの安全を守るための行動を取ります。

すべての人が「薬物をやめたい」と思うことが、理想的です。ですが、現実はそうではありません。

他者の行動や考え方を変えることは難しい。本人が「変わりたい」と思うために、周囲の人はどう関わるべきだろうか。

※1 これも自動販売機で、進化する販売サービスに注目|その他の研究・分析レポート|経済産業省
【参照サイト】UC study: Harm reduction vending machine makes impact | University Of Cincinnati
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