輸送コンテナが集中治療室に変身。新型コロナ感染に伴うICU不足解消に道ひらく

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新型コロナウイルス感染症が欧米を中心に猛威をふるい、感染者数は日々増大している。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界の感染者数は、4月2日時点で100万人。感染者数の増加にともない、病床はおろか集中治療室(ICU)までもが不足に陥っており、深刻な問題となっている。

たとえば、米国のICUの数は10万床未満(※2)。しかし、米国病院協会は感染者数の増加がゆるやかな場合でも20万床、深刻な場合は最大290万床が必要と推測しており、絶対数が足りない状況が明らかになっている。また、集中治療室を増やせたとしても、すでに屋内は緊急ベッドの導入などによりスペースがないところも多い。

こうした世界的なICU不足を受け、イタリアのデザイン会社、カルロ・ラッティー・アソシエティ(Carlo Ratti Associati)が米マサチューセッツ工科大学や物流の専門家、医療機器の供給者、医療コンサルタント、NGOなど多くの組織と非営利で協力し、使われなくなった輸送コンテナでプレハブの集中治療室「呼吸器の病気のための連結ユニット(CURA)」を開発した。設計図はオープンソースで公開されており、世界中のどこでも作れるようになっている。

CURA

Image via Carlo Ratti Associati

CURAはテントのようにすぐに組み立てられるだけでなく、感染症を治療できる高い機能性を備えている。たとえば室内はウイルスを外部に出さないよう室内の気圧を低くした「陰圧室」になっており、室内には人工呼吸器や手術台、外科用のベッドなどが備え付けられている。 ひとつのユニットにつき患者を2名まで収容可能だ。

CURA設計図

Image via Carlo Ratti Associati

ユニットを連結させたり、切り離したりできるため、既存の施設の屋内スペースに空きがなくても、屋外の空きスペースなどがあれば導入が可能なのが便利である。また、コンテナはトラックや列車、船などで輸送できるので、どこの国でもコンテナを空きスペースに運べば設計図をもとに集中治療室をつくることができる。

プレハブ集中治療室の開発の背景には、欧米での集中治療室不足もあるが、今後拡大が予測されるアフリカ地域での感染拡大をなんとか食い止めたいという思いもある。3月29日時点で、アフリカではすでに54か国中46か国に感染が広がり、感染者数は約4300人、死者は約130人を超えたと報道されている(※3)。医療システムの乏しい途上国で感染が広がればその影響は計り知れない。しかし、感染は日々急速に拡大しており、時間をかけて新たな施設を考案している時間もない。今回コンテナを使って短時間で開発をした背景には、こうした懸念があった。

試作品は3週間後をめどに、イタリアのメガバンク・ウニクレディトの支援を得て、ミラノで完成するという。

CURA

Image via Carlo Ratti Associati

このプロジェクトの支援を行う世界経済フォーラムのインフラ・都市サービス担当のアリス・チャールズ氏は「私たちが心配しているのは、南半球の人口が過密な都市部に広がっていること。特にアフリカは、最初の感染者が発見されてから40日間の感染者数の伸び率がヨーロッパよりも悪化すると見られている。したがって、できる限り早くこの状況を解決する方法を拡大する必要がある」と語っている。

集中治療室の数を増やすことで、医療システムへの負担を軽減する大きな力になる。日々、医療現場で奮闘する医療関係者、そして患者の皆さんへの朗報となることを期待したい。

※1 Johns hopkins corona virus resourse center
※2 米国病院協会調べ
※3 3月30日付 朝日新聞による各国の保健局や地元の報道のまとめ
【参照サイト】CURA
【参照サイト】Hospitals made from shipping containers could help tackle COVID-19

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