世界で研究が進む「人工的な雨」は、干ばつを救えるか

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今、世界中で「人工的な雨」の研究が進んでいることをご存知だろうか。

2022年の夏は、日本を含め世界中で記録的な猛暑が広がった。それに伴い、山火事や干ばつなどの自然災害も、世界各地で深刻化している。そんな状況を受け、人工的に雨や雪をつくり出す技術──「クラウド・シーディング」の研究が各国で進んでいるのだ。

クラウド・シーディングとは、「雲の種まき」という直訳のとおり、ヘリコプターなどを使ってヨウ化銀や液体窒素などの化学物質を雲の中に散布し、それを種として氷の結晶を発達させ、雨や雪を降らせる技術のこと。ある程度発達した雨雲に対して使用する手法であるため、雲がないところに雨を降らせることはできないのが特徴だ。

一般的には干ばつなど水不足の解消、山火事の消火、猛暑の抑制などの目的で使われるが、特定の日時を好天にするために事前に雨を降らせるといった用途で使われることもある。世界気象機関(WMO)の2017年の調査によると、米国、中国、インド、オーストラリア、南アフリカなど、すでに50カ国以上が何らかの形でクラウド・シーディングに挑戦しているという。

オーストラリアでは、2005年〜2009年のクラウド・シーディングプロジェクトにより、同国南東部のプロジェクトエリア全体の降雨量が14%増加したという研究論文が発表された。

中国では、2019年1月に新疆ウイグル自治区西部でクラウド・シーディングを実施し、農作物の70%が雹害(ひょうがい)を避けることができたと中国国営の新華社通信が報じた。

さらに中国政府は、2020年に大規模な気候制御計画を発表し、2025年までに国土の約56%、日本の面積の約15倍に相当するエリアでクラウド・シーディングを用いた人工的な降雨や降雪を行うことを目指すとしている。

このようにクラウド・シーディングは、気候変動への対策として各国で開発が急がれており、実際に成果が出ているという報告もある。しかし地球環境や生態系に与える影響はまだ十分には解明されておらず、自然界のバランスを崩すことにつながるのでは、という議論も根強く存在する。

国際ルールも未整備であるため、国家間の水資源争奪を生むのでは、という懸念の声もある。日経新聞によると、中国が気象制御計画を発表した際、インドなどの現地メディアでは「大きな脅威」「国際的な紛争につながる」と反発の声が挙がったほか、2018年にはイランの軍事組織幹部が、クラウド・シーディングに取り組むイスラエルを「雨雲を盗んでいる」と非難したという。

クラウド・シーディングをはじめとした気象制御技術は、その影響の解明やルールの整備、市民への十分な説明など、透明性の確保が今後の課題だと言えるだろう。

今や気候変動は、私たちの身近なところにまで迫ってきている。私たち市民個人も、こうした技術の動向を注視し、自分なりの意見を持つ姿勢を大事にしていきたい。

【参照サイト】 Is human made rain the way to help the increasing droughts?
【参照サイト】 China to forge ahead with weather modification service
【参照サイト】 資源巡る摩擦に懸念 生態系への影響も未知数

Edited by Kimika

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