貧困地域の救世主となるか。世界各地に現れる「3Dプリント住宅」

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今、世界各地で「3Dプリント住宅」が注目を集めていることはご存知だろうか。

3Dプリント住宅とはその名の通り、3Dプリンターで材料を印刷し、建設された住宅のこと。その大きな特徴は、注文から竣工までのスピードの速さと、コストの安さにある。

3Dプリント住宅で使われる部品は、あらかじめ工場で印刷され、倉庫で保管されるため、受注後すぐに納品が可能な上、組み立てにかかる時間も、短いものでは24時間以内だという。工事期間が短ければそれだけ人件費も削減できるため、建設コストも安く済む。

実際、3Dプリント住宅を提供する米国のスタートアップ・Azureでは、最安のもので約370万円から住宅を販売している。また、同社は部品の材料に主として再生プラスチックを使用しており、環境への影響の少なさでも顧客からの支持を集めている。

Azureの3Dプリント住宅

Azureの3Dプリント住宅

そうした3Dプリント住宅は、今や様々な課題に対する新たなソリューションとして世界中で広がりを見せている。

米国の別のスタートアップ・ICONは、現地NPO法人とタッグを組み、3Dプリント住宅を使った貧困地域への支援を行っている。同社が独自に開発したポータブル3Dプリンターで、エルサルバドルやハイチの農村地域など、エネルギーの安定供給が難しい地域で3Dプリント住宅を提供しているのだ。コストが安いため多くの住宅を供給できるほか、高い断熱効果がある同社製の住宅を提供することで、暑い夏も寒い冬も、エネルギーを使わずとも快適な暮らしが実現できるメリットがあるという。

ウクライナでは、屋根に設置された太陽光パネルで生活に必要なすべてのエネルギーを賄う3Dプリント住宅の開発が進んでいる。同住宅は電気やガスなどのエネルギー供給網による立地の制約を受けないため、先述のようなエネルギーの安定供給が難しい地域での活用や、災害時の一時的な住宅としての活用が期待できるだろう。

ドバイでは、なんと「将来的に新築建物の4分の1に3Dプリント技術を活用することを目指す」戦略が、ドバイ未来財団によって打ち出された。3Dプリント技術を使用することで、建設業界の人手不足問題や、現場労働者に対する人権侵害行為の解消を目指すという。

そんな3Dプリント住宅は、実は日本でも開発が進んでいる。2022年3月に、日本初となる3Dプリント住宅が兵庫県のスタートアップ・セレンディクスによって建設されたほか、建設会社大手の大林組も3Dプリント住宅の建設に着手しているそうだ。

外観完成予想図

外観完成予想図 Image via 大林組

3Dプリント住宅は、貧困層や低所得層への安価で快適な住宅の提供や、建設業界の人手不足の解消、現場の事故の削減など、さまざまな問題を解決する可能性を秘めた存在だと言える。

住む場所の確保は、安心安全な生活の基本だ。いわゆるネットカフェ難民を含めたホームレス状態の人の増加が深刻な問題となっている日本でこそ、こうした低コストの住宅の活用がいち早く進んで欲しいと思う。

【参照サイト】Azure Printed Homes Showcases the World’s First 3D Printed Backyard Studio Made From Recycled Plastic Materials
【参照サイト】日本初、セレンディクスが3Dプリンター住宅を発表  オープンイノベーションで研究開発、 国内・海外80社以上参加して実現
【参照サイト】 国内初の国土交通大臣認定を取得した構造形式を用いた3Dプリンターによる建屋の建設に着手|大林組
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Edited by Kimika

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