足元だけでなく上を見上げて。NYにある蜂の巣状の新しいホームレスシェルター

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蜂の巣状のアーティステックな外観が目をひく。まるでニューヨークの新たな観光名所のひとつのようだ。

Homedの外観

実はこれ、これまで活用されていなかった空間を利用した新しい形のホームレスシェルターなのだ。

この斬新な発想は、世界の主要都市での人口増加を解決するために生まれた。

ニューヨークでは、土地不足にともない、ここ数年で家賃が20%も上昇している。一方で、賃金は減少し、家賃を払えなくなる人が増えている。

現在、約61,000人の人々がホームレスシェルターで生活していると言われ、ホームレス人口は膨れ上がっている。これは、1970年代に大量に建てられた1人暮らし用の安価な物件の数が激減し、国からの助成金も打ち切られたためだ。

ある日、「ホームレスのシェルターは清潔さもなければ、プライバシーもない場所だ。」と、ノルウェー出身建築家のAndreas Tjeldflaatがあるホームレスの男から話を聞いた。

それを受け、Andreasは縦のスペースを有効活用したホームレスシェルターのアイデアを考えた。そのアイデアこそが、Homedだ。

Homedの構造

Homedとは、すでにあるビルのむき出しになっている壁を利用して、数十の蜂の巣状の小さなシェルターを工事現場にあるような足場で支え、クレーンを使ってぶら下げる案だ。

蜂の巣状のシェルター

シェルターにも工夫が凝らされている。3Dプリンターで作られたそれぞれのシェルターは、アルミからできた組み立て式で、内部構造にはリサイクルされたプラスチックを使用している。また、ベッド、椅子、そして収納スペースがあり、十分に大きい。断熱性と換気性のある作りになっており、快適性もある。

3Dプリンターで出来たシェルター

Homedの内観

窓は、流す電圧によって透明度が変わるスマートガラスになっている。そのため光が差し込み、外の景色を見ることができると同時に、プライバシーも守られる。さらには、居住者のアート作品を窓に展示したり、居住者の仕事探しなどを手伝うコミュニティの運営支金を集めるための広告スペースとしても利用できる。

にアート作品が投影されている

このHomedのアイデアは、従来のホームレスシェルターに比べ、清潔かつ、プライバシーが守られている、とAndreasは述べている。そして、なによりスタイリッシュで、ホームレス用のシェルターには見えない。

現時点で、1つのシェルターにかかる費用は、およそ10,000米ドル(日本円で約106万円)から15,000米ドル(約160万円)と見積もられている。これは、先日Bronxでオープンしたシェルターに比べて、30分の1程度の費用になる計算だ。

ニューヨークの街中にあるシェルター

ニューヨークに限らず、人口の増加に伴い土地代が高騰している主要都市は世界中にある。つまり、場所を限らず世界中で利用できるアイデアなのだ。

たとえば、世界一の人口密度をもつ都市・東京のある日本でも活用できそうだ。日本では、これからラグビーW杯、オリンピック、ワールドマスターズゲームズと3つの世界大会が開催される。現時点では、宿泊施設が足りないとささやかれてはいるが、このHomedのようなホテルが解決策につながるかもしれない。

Homedは従来のシェルターとは違い、私たちの足元にある土地の上に建てるのではなく、すでにある壁という土地を利用する。この「建物は土地の上に建てるもの」という固定観念を覆すアイデア。アイデアに行き詰まった時は、足元ばかりを見つめず、上を見上げてると新しいアイデアが思い浮かぶかもしれない。

【参照サイト】Framlab
【参照サイト】These Tiny Houses For The Homeless Perch On Building Walls
(※画像提供:Framlab

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