Chat GPTをソーシャルグッドに使う、世界の事例

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「今日の天気は?」「電気を消して」などAIによく話しかけて生活している人もいるだろう。簡単な情報の検索や、機械の操作などは自分の相棒のように人工知能が動いてくれる世の中になってきた。

そんななか、文章生成に重きを置いたAIサービス「Chat GPT」が一世を風靡している。これはアメリカの研究所「OpenAI」が開発した人工知能技術のことで、チャットを通して高度な文章生成や会話ができるものだ。大量のデータを学習することで、自然な言葉遣いで返答できる。

複雑な質問を処理できるだけでなく、文章作成や表の作成、アイデア出しなど、仕事のスピードをおそろしい勢いで高め、社会問題の解決にも役立つ可能性があるとして注目が集まっている。

Chat GPTをソーシャルグッドに使う、2つの事例

Chat GPTは、文章生成のチャットツールで個人を助けるだけでなく、社会課題の解決にも役立つ技術だ。ここでは、世界の行政と企業による活用例を2つ紹介したい。

アイスランド政府による、ネイティブ言語維持施策

アイスランド

アイスランドでは、約37万人の国民が英語や第二言語を話すことから、母語であるアイスランドが危機に直面している。アイスランド政府はOpen AIと提携し、母語を守る取り組みを始めた。

2023年4月時点の最新バージョンのGPT-4でも、アイスランド語では文法や、文化的知識の誤りが依然として多く発生していた。そこで、言語技術会社のボランティアチーム40人でGPT-4に正しい言語と文化的知識を習得させた。

GPT-4がアイスランド語に十分対応できるようになると、現地の企業がWeb上で消費者とチャットでコミュニケーションをとるときに、英語に頼らずに対話が可能になる。また、現地のMiðeind社の音声アシスタントアプリ「Embla」では、ユーザーと流暢なアイスランド語で会話し、多言語への翻訳もできるという。

アイスランド政府は、こうした取り組みを通して、言語や歴史、文化の保全を進めるだけでなく、経済繁栄の基盤にすることを目指している。アイスランド語をデジタル時代に保存するために、最先端のAI技術を活用したユニークな事例だ。

【参照サイト】OpenAI Government of Iceland

視覚障害のある人をアシストするアプリ「be my eyes」

be my eyes

「be my eyes」は「目が見えない人や弱視の人々にとって、世界をもっと身近にする」をミッションに掲げるデンマーク発のアプリ。2015年に創業してから、目が見えない人々と登録している630万人のボランティアをつなぎ、日常生活を支援するサービスを展開してきた。

2023年現在は、OpenAIと提携した新しいツールを開発中だ。その機能は、ユーザーが送った画像を認識し、内容をテキストと音声にして伝えるもの。例えば、冷蔵庫の中の写真を撮ってアプリに送信すると、中身を正しく認識して伝えるだけでなく、食材を使ったレシピを段階的に教えてくれるというのだ。もし、AIが写真から質問に答えられない場合は、自動的に目の見えるボランティアに繋ぎ、サポートを受けることができる。

この取り組みは、企業にとってもより良いサービスを展開することに役立つとされる。写真の内容をすぐに知ることができれば、弱視や目の見えない人がオンラインショッピングをしたり、海外旅行で電車に乗ったりするのがスムーズになるなど、さまざまな場面で可能性が広がることが期待される。

【参照サイト】be my eyes Introducing Our Virtual Volunteer Tool for People who are blind of Have Low Vision. Powered by OpenAI’s GPT-4

まとめ

技術革新には、必ず良い面と悪い面が生まれる。Chat GPTに関しては、個人情報保護の観点からイタリアが使用を一時禁止にしたり、ドイツとフランスも禁止を検討していたりと不安の声もある。今後世界がどのような動きをしていくのかにも注目だ。

Chat GPTをうまく使いこなすことで、仕事の効率と質が上がり、社会課題にも取り組める。AIの情報を全て鵜呑みにするのではなく、アイデアを得るために使うなど、ユーザー自身がリテラシーと責任を持って活用することで不安を取り除くこともできるはずだ。

Chat GPT-3.5のバージョンまでなら、無料で簡単に誰でも使うことができる。正しい情報を自分でも調べることを意識した上で、ぜひ活用してみてはいかがだろうか。

【参照サイト】TS2 SPACE  Harnessing the Power of Chat GPT-4 for Social Good
Edited by Kimika

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