ブラジルの貧困街ファベーラにある「ただの家」が、世界的な建築賞を受賞したワケ

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貧富の差が激しいブラジルでは、主要都市周辺にファベーラと呼ばれるスラム街が点在している。不法占拠する形で築かれた住居では生活インフラが整っておらず、まちの治安や衛生環境は劣悪だ。

そんなブラジル・ベロオリゾンテ市のファベーラに建てられた一軒の家「Casa no Pomar do Cafezal(カーザ・ノ・ポマール・ド・カフェザル)」、別名「Barraco do Kdu(カドゥの家)」が、世界中の建築関連情報をカバーするサイトArchDailyの「BUILDING OF THE YEAR 2023」コンペの「住居」部門で見事優勝した。

一見、ファベーラでよくあるレンガ造りの家と見分けがつかないカドゥの家。しかしそんな「普通の家」には、ファベーラの住環境の改善に役立つ機能が備わっている。

ArchDailyは「ブラジルのスラムにある一般的な建材を使いつつも、通気性と自然光に配慮したデザインにより、住環境を劇的に改善した素晴らしい例だ」と、その受賞を称えている。

 

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カドゥの家には、大きな特徴が二つある。

一つ目は、放熱と通気性。ファベーラでは家が密集して建てられている。その影響で家の中は風通しが悪くなり、暑苦しくなりがちである。

そこで、蒸し暑さを改善するため、レンガの積み方が工夫されている。通常、レンガは縦横の一番長い側を下にして立てて並べられる。この方法だとレンガの使用量が減らせるうえ、早く高く積み上げられるからだ。しかしカドゥの家は、レンガを寝かせて並べている。この方法だと壁に厚みが生まれる。

たったそれだけの違いだが、放熱性が格段に良くなり室温調整がしやすくなるとのこと。

また風通しの良い家にするため、風の入口はもちろん、その出口を確保することもしっかり考慮して設計されている。その効果的な工夫は、開閉式の小さなガラスでできた窓とドアだ。窓は、全体も引き戸の様に大きく開閉でき、より多く風が取込められる仕組みになっている。

そして、二つ目が自然光。無断で建てられている住居には、もちろん電気は通っていない。夜に明かりがついている家は、付近の電線からの盗電がほとんどだ。カドゥの家は、床から天井まで届くように設計された窓とドアから、自然光がふんだんに差し込む。それだけで家の中が明るくなる。

 

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この家は、Fernando Maculan(フェルナンド・マクラン)と Joana Magalhães(ジョアナ・マギリャエンス)の二人の建築家が率いる団体LEVANTE(レバンチ)が実施したプロジェクトのひとつ。

マクランはプロジェクトの目的について、サステナブルな方法で住環境の改善策を住人たちに提供することだと述べている。そして、多くの住人たちに改善策を取り入れてもらうことを願っている。

一方、家主のカドゥは、ミュージシャンや俳優など様々なジャンルのアーティスト活動をするほか、自身が暮らすこのファベーラにコミュニティセンターを創設し、センターの代表としても活動している。センターでは、学校で習う勉強を教えたり、ダンスや音楽など芸術関係のクラスを用意したりしているほか、炊き出しや配給を行うなど、幅広い活動を通してファベーラの住人が自立して生活できるよう支援している。

受賞した喜びを「言葉が出ないくらい嬉しい。この賞を、世界のスラム街に住むすべての人に捧げる。明日はファベーラでパーティーだ!」と、インスタグラムで報告したカドゥには、世界中からお祝いのコメントが寄せられた。

2015年に国連で採択された、持続可能な世界を目指すSDGsの目標11は「住み続けられるまちづくり」がテーマだ。目標達成のターゲットには、スラム街に焦点を当てたものもいくつかある。世界各国でスラム街を解消する取り組みが行われているものの、課題が多く有効な方法はいまだ見つかっていない。

カドゥの家が国際的な賞を獲ったことにより、ファベーラの状況が広く認知されるきっかけとなった。世界の志高い建築家による次なるプロジェクトが立ち上がり、新たな住環境の改善策がもたらされることを心待ちにしたい。

【参照サイト】ArchDaily “Casa no Pomar do Cafezal / Coletivo LEVANTE”
【参照サイト】Globo “Casa do Aglomerado da Serra, em BH, vence concurso internacional de arquitetura; FOTOS”
【参照サイト】家主kdudosanjosのInstagram
【参照サイト】LÁ DA FAVELINHA
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Edited by Masae Tago

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