ヨーロッパの街並みといえば、大聖堂を思い浮かべる人も多いだろう。何百年も前に建てられたものが多いが、2025年にアムステルダムには新しい大聖堂が完成予定だ。今回は、その一風変わった大聖堂を紹介する。
運河を、船に乗ってプラスチックを“釣る”アクションで一躍話題となった、アムステルダムのスタートアップ企業「Plastic Whale」。その創設者マリウス・スミット氏が最新プロジェクト「Cathedrall」を発表した。なんと水に浮かぶというこの大聖堂は、さまざまな種類の「都市廃棄物」を使って建てられる予定だ。
2023年後半に着工し、2025年8月に完成予定の“水上大聖堂”は、個人、企業、政府機関などがさまざまな分野でコラボレーションすることを促すハブとなる。また、教育プログラム、講演会、展示会も開催されるという。
廃棄物でつくられたとは思えない、美しい建築物をつくることで、変化の力強いシンボルになるかもしれない。近年は、サーキュラーエコノミーという言葉が徐々に浸透してきている。だが、どこか難しそうで、とっつきにくいような商品やサービスが多く、自分で積極的に取り組むのは少しハードルが高い印象がある。一方で、街の象徴となるような美しい大聖堂が廃棄物からできていると知ると、社会課題がとても身近に感じられるかもしれない。
「この場所は、廃棄物や原材料を違う視点でみる必要があることを明確に示し、サーキュラリティを具体化する場所です。私たちはここで、これまでとは違ったやり方ができる、またそうしなければならないと確信している人々を集めたいのです」
と、スミット氏はSilocon Canalsに対してコメントしている。
このプロジェクトのコンセプト開発、デザイン、完成後の利用活性化に関する戦略はクリエイティブ・スタジオD/DOCKが担当。同社は、建物とその空間のデザインだけでなく、その空間がどのように使われているかという点にも注目している。今回の大聖堂は、修道院が研究とイノベーションの拠点とされていることに着想を得て、デザインと活性化の取り組みを通じて、前向きな行動変容をもたらすことを目指している。
また、インパクト・イノベーション・エイジェンシーのMax-Gは、サステナビリティと財政面での持続可能性を両立させるビジネスモデルの開発で専門知識を提供している。プロジェクトの財源をすべて寄付や補助金に依存すると、プロジェクトを継続することは難しい。しかしCathedrallプロジェクトでは、従来のような株主優先なビジネスモデルではない、協力し合うことで実現する新たなモデルを目指している。
画期的なソリューションは人々、アイデア、テクノロジーを結びつけることによって生み出されると信じている3社。さまざまな企業、団体、個人のコラボレーションを促したい考えだ。建築会社、廃棄物の管理会社、サーキュラーテクノロジーを持っている会社、投資家などそれぞれが持っている知識や専門性、リソースを共有することでCathedrallプロジェクトは実現するのだ。
街のシンボルともいえる大聖堂。人々が集う場所だからこそ、みんなで協力して、変化を生み出すことができるかもしれない。
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【参照サイト】Cathedrall公式サイト
【参照サイト】Amsterdam’s Plastic Whale collaborates with D/DOCK and Max-G for a floating ‘Cathedrall’ made out of urban waste
Edited by Erika Tomiyama