5,000。この数は世界で毎日新たに設置される地雷の数だ。
世界には、現在1億以上の地雷が埋められている。アフガニスタンやコソボなど、さまざまな地域で毎年1〜10万人もの人々が地雷によって死亡している(※1)。多くの場合、被害者は地雷の存在を知らないまま踏んでしまう。特に子どもはそのリスクが高く、地雷の被害者の43%が子どもだとされている。(※2)。
これまで、国連やそれぞれの国の政府によって、世界各地で地雷除去が進められてきた。地雷除去には主に二つの方法がある。一つ目は人力による作業で、探知機を使って爆破させ処理するが、これには時間がかかり処理中に従業員が死亡する事故も多く発生している。二つ目は重機による処理で、効率は良いものの、地形によって重機が使えない地域がある。そして重機は1台およそ100万円と高額なため、資金のない地域では購入することが不可能だ。
そこで革新的な地雷撤去装置を開発したのが、アフガニスタン人の開発者マスド・ハッサニ氏である。アフガニスタンには3,000万個もの地雷が埋められており、同国の人口に近い数字だと言える(※3)。
マスド氏は幼少期に遊んでいた風で動くボールのおもちゃからアイデアを得て、2016年に地雷撤去ボール「Mine Kafon」(以下マイン・カフォン)を開発した。デザインの力で人の命を守る好事例として、今でも十分知られるべきアイデアである。
基盤となるボールには、スパイクとなる吸盤のついた竹の足がつけられている。重さによって風で自由に自走するマイン・カフォンは地雷を踏むと、わざと爆破させて撤去する。このとき、爆破によって2〜3本の足が破壊されるだけであるため、マイン・カフォンは地雷発動後も転がり続ける。
また、ボールにはGPSが組み込まれており、安全な進路を追跡するのに役立つ。竹とボールのシンプルな構造でできているため、大人から子どもまで、簡単にボールに足を取り付けられるデザインだ。
驚くことに、動力は風であることからマイン・カフォンの生産コストは1台約40ドルであり、これは従来の地雷撤去装置の200分の1のコストだ。
数々のデザイン賞を受賞したマスド氏はさらなる効率性を求めて「マイン・カフォン・ドローン」も開発した。地雷探知と地雷処理の両方の機能を備えたこのドローンは、地球上の地雷を10年以内にすべて処理することを目指している。
マスド氏の発明は、シンプルな発想と安価に作ることのできるデザインが世界の平和に貢献することを証明した。世界中の子どもが地雷のない自然で自由に走り回る未来が来るのか、今後の開発に期待だ。
※1 National Library of Medicine: Anti-personnel landmine injuries: a global epidemic
※2 The-monitor.org: The Impact of Mines/ERW of Children
※3 Afghanistan: Land Mines From Afghan-Soviet War Leave Bitter Legacy(Part 2)
【参照サイト】awareness: Minekafon.org
Edited by Kimika