学校や職場に行きたくない、シャワーを浴びるのも億劫、食欲がわかず、良い睡眠が取れない……それらは心の不調サインかもしれない。そうなったとき、あなたはどうするだろうか?地域や国にもよるが、そこで「心療内科やカウンセラーなど、専門家に相談する」ということに抵抗がある人も多いだろう。
そうしたメンタルヘルスの問題は、地域を問わずにあるようだ。アフリカのケニアでも、メンタルヘルスに問題を抱える人は増加の一途をたどっており、ケニアの人口の25%が何らかのメンタルヘルスの問題を抱えているとされているほどだ(※)。こうした背景のもと、エスター・チネンイェ・エルチエという女性が、主にアフリカの人々に向けたAI駆動のメンタルヘルスアプリ「FriendnPal」を開発した。
エスターは、母親がメンタルヘルスの問題で亡くなったという彼女自身の辛い経験から、このアプリを開発することを決意した。FriendnPalの主な特徴は、「匿名性」だ。ユーザーは自分の真の身元を明かすことなく、必要な助けを求めることができる。スティグマ(周囲の人からの偏見)や資金不足などの問題により、助けを求めにくい立場にある人にとっても使いやすい設計になっているのだ。さらに、アプリ内にはコミュニティのセクションもあり、被害者同士での共有やサポートをすることもできる。
FriendnPalは、社会的な「善」のためにAIを使用することを掲げているのも特徴だ。アプリは、ユーザーが落ち込んでいるときに彼らと会話するためのチャットボットを使用している。このチャットボットは、特定の会話のためにプログラムされており、AIは会話が進行するにつれてより精度の高い回答ができるよう、学習する設計になっている。
このアプリは、アフリカ大陸で話されているいくつかの言語、例えばスワヒリ語やフランス語、ヨルバ語、英語などに対応している。これにより、言語の障壁や資源の不足により助けを求めにくいコミュニティにもサービスを届けようとしている。
FriendnPalは、アフリカのメンタルヘルスの問題に対する新しいアプローチであり、多くの人々に希望をもたらす可能性がある。そしてそこで学習されたことは、ゆくゆくアフリカの外に住む人を救うことにもなるかもしれない。
※ Voices from the Youth in Kenya Addressing Mental Health Gaps and Recommendations
【参照サイト】FriendnPal
【参照サイト】Breaking Barriers: Woman Pioneers AI-Driven App to Help Victims of Mental Health in Africa
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