ブラジル・サンパウロの中心地に、「ブラジルで最も持続可能なマクドナルド」が誕生した。市内でも交通量が多いことで知られる交差点のひとつに今年完成したその建物は、220平方メートルと広々とした店舗だ。
このプロジェクトを担当した地元の建築事務所「Superlimão Studio」は、近くにある大通りの中央分離帯にわずかに残る木々にインスピレーションを受けている。生物の構造や機能など、自然界から着想を得て新しい技術に応用する「バイオミメティック」というアプローチを採用しているのだ。
「自然とのつながり」をテーマにしているこの建物を外から見ると、二本の大木をイメージしたような柱が並び、まるで木の枝の中に店舗があるように見える。通行人の目にも留まりやすい印象的なデザインは、木材を二次加工し、強度を上げるエンジニアリングウッドと呼ばれる素材を組み合わせた建築様式を採用。木の特性や性質を活かしながらも、より強度や精度の高い部材として利用でき、製造時のエネルギー消費も少ないといわれている。
また、木材を直交する層に積み重ねて接着し、板状にする建設材料「クロスラミネート・ティンバー(CLT)」を使うことで、素材の寿命を強化したという。これらの素材は、工場で予め加工され、現場で組み立てることで、建設現場での廃棄物やエネルギー消費を削減。また、工事期間の短縮により、敷地や周辺地域の環境への影響も軽減した。
さらに、屋内装飾に使われる素材も、地元のサプライヤーから取り寄せたものを使用。例として、従来磁器タイルが使われる部分には、「Concresteel」という地元で生産されている素材を使った。また、以前はメラミン樹脂が使われていた箇所には、リサイクルPETラミネートを採用している。
建物の1階には、ドライブスルーラインが設置されており、屋内には100%リサイクルプロピレンで作られた4つのセルフサービスキオスク、レジエリア、マックカフェとデザートキオスクがある。2階はメインのダイニングエリアで、座席の一部は観覧席のような形になっており、くつろいだり、交流したり、勉強したりできる環境を提供している。
また、各階の間にある分厚い木製の基盤は、まるで木の枝葉のように日陰をつくり、1階に入る日差しをコントロールしたり、屋内の温度を調節したりする。屋上には植物が植えられているため、グリーンルーフとして、建物内の温度調節にも役立っている。雨水とエアコンの水は回収して再利用される点もポイントだ。
中心地で人々が多く行き交う場所に、戦略的に目を引くデザインの店舗を設置したことで、思わず立ち止まってみてしまうようなデザインの建築でありながら、サステナブルな建設方法を採用していることをアピールするショーケースにもなっている。来店者は、QRコードをスキャンすることで、店舗に施されているサステナブルな取り組みについて詳しく知ることができる。
「環境に対する意識は行動と同じくらい重要です。私たちはこの建設プロジェクトそのものを、環境教育と意識向上のために使いました」
とSuperlimão Studioのパートナー、Lula Gouveia氏はdezeenに対して語っている。
この店舗のように、目を引くデザインの建築物があると好奇心がわいて、「どんな建物なのだろう?」と調べてみる人も多いだろう。そんな楽しいきっかけがあって、環境問題について学んだり、インスピレーションを受けたり、環境に配慮したアクションにつながったりすることもありそうだ。このようなポジティブな気持ちや行動こそ、課題解決に一番必要なことかもしれない。
【参照サイト】Superlimão uses mass timber for the “most sustainable McDonald’s in Brazil”
【参照サイト】Superlimão Studio
Edited by Erika Tomiyama