夕食にマイクロプラの缶詰はいかが?皮肉たっぷりの啓発キャンペーン

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スペインで、可愛いらしいターコイズブルーの缶詰が話題を集めている。サプライズで届くこの缶詰はなんと無料で、海から新鮮なまま家に直送されるというのだ。

「Péllets Delicias del Mar(海の喜びペレット)」という名前のこの缶詰のウェブサイトにアクセスしてみると、「頼んでもいないのに、サプライズで届く贈り物。この料理の謎を探り、一口ひとくちに隠された謎を発見してください」と記載されている。実はこの缶詰、海の生態系を壊すことで問題となっているマイクロプラスチックを詰めたものなのだ。

ウェブサイト内にある動画は、まるでスーパーマーケットの特売CMのようなカラフルな映像と、元気いっぱいのナレーションでキャンペーンの皮肉を表現している。

産地はどこか、何個あるのか、どんな影響があるのか。疑問はあるが、サプライズで家に届けられ、しかも無料。さまざまな色の粒があって、味はよくわからない。こんな斬新なマイクロプラスチックの缶詰を夕食に食べてみてはいかがだろうか?

しかし動画の最後には、皮肉なトーンはなくなる。マイクロプラスチック汚染の環境的・経済的影響を調査し、行政からの情報発信の透明性と科学的正確さを求めるための賛同署名を募る内容となっているのだ。

SNSアカウントでも、その皮肉なトーンでの投稿が続いていた。「海がシェフになったら?」「食料庫に侵入者?」など、知らず知らずのうちにマイクロプラスチックが食卓に入り込むことを伝えている。

マイクロプラスチックが詰まったこの缶詰は、実際に存在するものではなく、人々の問題認知のためにつくられた。生物多様性の保全を目的とする環境NGO Cheloniaは「夕食にプラスチックはいかがですか?(Plástico para cenar, ¿te lo comerías? )」と題したこれらキャンペーンを通して、スペイン北西部ガリシア州で発生しているマイクロプラスチック危機に関連する署名を集めている。

2023年12月に、ポルトガル沖にて荒波により貨物船のコンテナが落下し、積み荷であった樹脂ペレット(5ミリ程度の大きさの粒状のマイクロプラスチック)が海に流れ出てしまい、現在は大量にスペイン北部の海岸に漂着しているのだ。

この危機的な状況に関して、連日報道が行われているにも関わらず、ガリシア州政府の動きは鈍い。そんな状況を受けて、行政が真剣かつ透明性をもって対処できるよう、対話と社会的要求を喚起するために必要な注目を集め、オンライン署名サイトChange.orgでの署名を集めている。

「このアクションの目的は、環境に関する重要な問題について、政府が透明性を欠いていることに光を当てることです。さらに、ほとんど語られることのないペレットによりマイクロプラスチック汚染によって、人々が日常的に直面しているリスクについて注意を喚起することも目的としています」と同NGOはIberian Pressに説明している。

問題は理解していても自分ごと化できなかったり、ネガティブな訴求方法だと署名をしたくなかったり、大事なアクションを妨げてしまうことがある。クリエイティブを使った事例で、より多くの注目を集め、署名を集めていく良い事例だ。

【参照サイト】Péllets Delicias del Mar
【参照サイト】Plástico para cenar. ¿Te lo comerías?
【参照サイト】¿Un poco de plástico para la cena? Pellets Delicias del Mar es una opción perfecta

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