植物繊維でマイクロプラスチックの流出を防ぐ。フィンランド発のろ過技術

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私たちの暮らしにはプラスチックがあふれている。家の中を見渡すと、食器や洋服、冷蔵庫から洗濯機まで多岐にわたる製品にプラスチックは使われている。一見プラスチックでないようなものでも部分的に使われていることも多く、完全にプラスチックを排除した生活はなかなか難しいとさえ思われる。スーパーにエコバッグを持参し、レジ袋をもらわないようにする取り組みなどはよく見受けられ、プラスチックが漠然と「環境に良くない」と考える人は多いだろう。

特に石油からつくられるプラスチックは分解されにくく、1mmもしくは5mm以下の小さなプラスチックとして残ることが多い。マイクロプラスチックと呼ばれるこの小さなプラスチックは、シャンプーや日焼け止めなど多くの日用品に含まれているが、とても小さいために下水処理場で完全に処理できず、その一部がフィルターを通過して海に流されており、人体や海洋生物に与える影響などについて研究が進められている。

そんな中、VTTフィンランド技術研究センター(以下、VTT)は、ナノセルロースという繊維物質を用いて海に流れ出す前にマイクロプラスチックを捕獲する方法を開発した。

(c) VTT

ナノセルロースとは、主に植物を由来とする非常に小さいセルロース(炭水化物の一種)繊維のことを指す。軽量で強度が高いことに加えて温度変化による伸縮が小さく、環境負荷が少ないという特徴を持ち、車の部品や住宅建材からフィルターや食品フィルム、医薬品や化粧品まで幅広く用いられ、次世代のバイオ素材(植物由来の素材)として注目されている。

研究チームは、このナノセルロースの膜とヒドロゲル(水分を含むゼリー状のゲル)を使用したマイクロプラスチック捕獲法を考えた。ナノセルロースはメッシュのような多孔質構造と大きなBET比表面積(単位質量あたりの表面積)を持ち、水中で強力な毛管力(狭い空間への水の出入りの際に生じる力)を構造内で生成するため、メッシュ内に運ばれたマイクロプラスチックをそのまま吸着できる。この方法を用いることで、直径わずか100ナノメートルといった、人間の目では検出できないサイズのマイクロプラスチック粒子を捕獲できるのだ。

「ナノセルロース構造を使用すると、マイクロプラスチックを識別して分析し、はやい段階でその情報を取得できる。たとえば、水中のマイクロプラスチックの濃度を測定して、プラスチックボトルから飲料水中にマイクロプラスチック粒子が放出されるかどうかなどを分析できるようになる。」と、VTTのリサーチプロフェッサーであるテクラ・タメリン氏は述べている。

次のステップは、マイクロプラスチックが発生する場所でマイクロプラスチックを捕獲することと、新しい安価なろ過ソリューションの開発。このろ過膜を洗濯機に設置することで、フリース素材の衣類や他の合成繊維から放出されるマイクロプラスチックを捕獲できるようになる。また研究チームは、マイクロプラスチックを生成して水路に放出するリスクを持つ業界用のろ過方法の開発も計画している。

植物由来のエコな材料を用い、捕獲が困難なマイクロプラスチックを捕えるというVTTの新たな解決策。今後のさらなる研究開発が期待される。

【参照サイト】New solution to capture microplastics before they enter waterways
(※画像:VTT より引用)

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