オーストラリアのビクトリア州・メルボルン市の中心部に位置する、市内最大規模の市場クイーンビクトリアマーケット。2023年11月、その隣に公立図書館がオープンした。
その名は「narrm ngarrgu(ナールム ナールグ)図書館」。これは先住民の言葉で「メルボルンの知識」を意味する。この施設は通常の図書館とは異なり、ファミリーサポートが一体化していることが特徴だ。子育てや家族の悩みを気軽に相談できるファミリーサポート、カウンセリング、子どもの予防接種なども提供。また、図書館へのアクセスが難しいメルボルン市内の人々に無料Wi-Fiや書籍、ゲーム、教育リソースなどを提供する移動図書館「Mel-van(メルヴァン)」にも参加している。本記事では、筆者が実際に現地を訪れた様子をお届けする。
建物は、合計3,000平方メートルの敷地に960平方メートルの大きな屋外テラスを備えている。モダンなデザインの建物に、子どもが魅了される植物や昆虫をあしらったカーペットが印象的だ。
施設には、子どもと家族向けの図書館の専用フロア、学習エリアとコンピューターエリア、読書&イベントスペース、クリエイティブメーカースペース、2つのサウンドスタジオ、予約できる会議室などがある。
クリエイティブメーカースペースには、3Dプリンターやミシン、商業用のプリンターなどが備えられており、説明会に参加することで誰でも自由に利用できる。説明会は、2週間先まで予約でいっぱいだった。ちなみに、メルボルン市内の図書館では、イベント予約や書籍の貸し借りなど、すべての手続きをアプリで行うことができる。
蔵書は約3万点あり、成人向けコレクションが2万2千冊、子ども向けコレクションが8千冊。メルボルン市の多様な人種を反映し、様々な言語の書籍が揃っている。日本語の書籍もあった。
また、4階に位置する子どもと家族向けの専用フロアには、大型モニターでゲームを楽しめるゲームコーナーや、タッチパネルのぬり絵などデジタル教材が充実している。この日も、子どもたちが父親と一緒にデジタル教材を楽しんでいた。
さらに、授乳やおむつ交換ができる「Parents Room(両親の部屋)」や、ジェンダーフリーのトイレも備えられている。ファミリーサービスやお弁当が食べられる安全なテラスも同じフロアにあり、子どもを中心に設計された優しい雰囲気に包まれている。
オーストラリアは移民の国であり、多様な人種や言語を持つ人々が共に暮らしている。narrm ngarrgu図書館は、そうした多様性を尊重し、地域のコミュニティをより豊かにしている。学生から近隣の高齢者まで、あらゆる人々が心地よく過ごせるよう、空間やレイアウトに工夫が施されているのが印象的だった。コミュニティの中心地として、あらゆる人々に豊かなインスピレーションを与えてくれる場所だ。
【参照サイト】narrm ngarrgu Library and Family Services
Edited by Erika Tomiyama