オーストラリア発、先住民との「寿命格差」を埋めるファッションブランド

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オーストラリア・メルボルンを歩いていると、街ゆく若者たちが身に付けた「赤・黒・黄色」の原色ファッションを見かけることがある。この3色は、オーストラリアの先住民(アボリジニとトレス海峡諸島の人々※1)の伝統的な国旗を象徴しており、赤は大地、黒は先住民の人々、黄は太陽を意味する。

Closing The Gaps

Image via Closing The Gaps

オーストラリアには、少なくとも4万年以上前から暮らしていたとされる先住民(アボリジニとトレス海峡諸島の人々)が存在する。しかし約200年前のイギリスによる植民地化以降、先住民への迫害や同化政策により先住民と非先住民の間の生活水準の差が広がった。その差は、現在でも存在している。

生活水準の差は年々縮まってきてはいるものの、2020年に発表された政府の調査では、先住民の平均寿命は非先住民に比べて約8年短いという結果が出ている(※2)。まだまだギャップは大きく、それは身体的な要因だけでなく、教育・雇用・住居・給料などの社会的な要因も大きいと言われている。

メルボルン発のファッションブランド「Clothing The Gaps(クロージング・ザ・ギャップス)」は、そんな先住民と非先住民の間にある平均寿命の差を縮めることを目的に設立された。ブランド名は、先住民の健康や寿命の格差をなくすためにオーストラリア政府が推進している政策「Closing the Gap(クロージング・ザ・ギャップ)」をもじったものだ。

クロージング・ザ・ギャップスは社会的企業として、クロージング・ザ・ギャップス基金(公衆衛生専門家の指導のもと、先住民の健康増進に取り組み、生活をより豊かにする活動をしている非営利団体)に資金を提供し、サポートをしている。また、スタッフの80%が先住民で占められ、彼らが人生の目標や野心を追求できるよう積極的に支援している。2022年にはB Corp認定も取得した。

クロージング・ザ・ギャップスの創設者の1人であるローラ・トンプソン氏は、「先住民の人々やコミュニティが繁栄できるように、意味のある商品を作り、人々に影響を与え続けたい。これからの時代は、ブランドがそのプラットフォームを使って社会変革を起こすことができると考えている」と話す。

 

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クロージング・ザ・ギャップスの商品は、メッセージ性の強いものからシンプルなものまで幅広いラインナップで誰でも気軽に身につけやすい。自分の価値観を表現したい人、デザインが気に入ったから着たい人……どんな理由でも身につけているものが人々に影響を与え、そこから社会変革につながる会話が生まれるのではないだろうか。

※1 現在英語での「アボリジニ(Aborigine)」は差別的表現とされており、「Aboriginal people」「Aboriginal Australians」などと呼ばれることが多いが、ここでは便宜上「アボリジニ」と表記する。
※2 Closing The Gap Report 2020
【参照サイト】Clothing The Gaps
【参照サイト】Clothing The Gaps Foundation
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Edited by Megumi

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