広がる活躍の場。ダウン症のある人々が“自分らしく”働く事例3選【世界ダウン症の日】

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今日、3月21日は「世界ダウン症の日」だ。2004年に国際ダウン症連合が制定し、2012年には国連によって国際デーのひとつに制定された。

ダウン症(ダウン症候群)とは、21番目の染色体が1本多くあるために発症する、先天性の疾患だ。700人〜1000人に1人の割合で発症するとされ、日本には現在8万人ほどいるとされている。ダウン症のある人々は、一般的に知能の発達がゆるやかで、心臓や呼吸器など身体に合併症を持つ場合が多く、生育期には特に周囲のサポートを必要とする場合が多い。

一方で、才能を活かしてモデルやアーティスト、俳優として活躍するダウン症のある人々は多くいる。また、近年ではそうした人々を雇用する飲食店も増えるなど、活躍の場は大きく広がってきている。

今回は、そんなダウン症のある人々の活躍の場を広げる、3つの事例を紹介したい。

ダウン症のある人々の活躍の場を広げる事例3選

01. ダウン症のある人々の自信を育てる。オランダのカフェチェーン「Brownies & downieS」

「Brownies&Downies」は、オランダ国内で60店舗近くを展開する、ダウン症のある人々がスタッフとして働くカフェチェーンだ。ダウン症のある人々に、「自分たちもカフェで働けるんだ」という自信や、社会の一員として認められている実感を持ってもらうことをビジョンに掲げ、社会での活躍の幅を広げるトレーニング施設として運営している。

お店ではダウン症のあるスタッフを「ダウニーズ」と呼び、ウェイター・ウェイトレスから、キッチン、レジ打ちまで、能力に応じてさまざまな仕事を任せる。料理を監修するのはプロのシェフであり、そのクオリティが高いのもこのカフェチェーンの成功と人気の秘密だ。ダウニーズたちとコミュニケーションをとることや、働く様子をみるのが好きで訪れるお客さんも多いという。

筆者も実際に、オランダ・ハーレムの店舗を訪れたことがある。お店は地元の人や観光客でいっぱいで、飲食店として成功していることが感じられた。混雑する店内を縫って器用にプレートを運ぶダウニーズや、仕事の合間に地元の音楽隊と共に楽しそうにクリスマスソングを演奏するダウニーズの笑顔が、印象に残っている。

福祉からビジネスへ。ダウン症の人が働くカフェ「Brownies&Downies」

02. ダウン症のある人々が生計を立てられるように。フランス発カフェチェーン「CAFÉ JOYEUX (カフェ ジョワイユ)」

CAFÉ JOYEUX

CAFÉ JOYEUX パリ シャンゼリゼ通り店の様子。店内は子どもたちやペット連れの家族、仕事をする人や観光客など、多様な人で溢れている。

「CAFÉ JOYEUX」は、ダウン症や自閉症スペクトラムなどの障害のある人々を雇用する、2017年に創業されたフランスのカフェチェーンだ。同社によると、こうした障害のある人々は、健常者に比べ2倍〜3倍失業のリスクが高いという。この課題を解決するため、同カフェではインターン採用から訓練、正式採用まで一貫して行い、その利益は全て新たな従業員の雇用に充てられている。

先に紹介したオランダのカフェチェーン同様、こちらも社会的ミッションを掲げながら飲食店ビジネスとして成功し、今ではフランスを中心にポルトガルやベルギーにも店舗を展開。これまでに154人の障害のあるスタッフを雇用してきた。カラフルなお店は幸せに満ち溢れた雰囲気で、ブランドロゴをあしらったオリジナルグッズはつい手にとってしまいたくなる可愛さだ。

米コーヒー協会が高評価した質の高いフェアトレードのコーヒー豆や季節の食材を使用するなど、食事のクオリティにもこだわっている。注文するとレゴのブロックをひとつ渡され、料理と共に同色のブロックがもうひとつ運ばれてくる。このユニークな仕組みは、「人それぞれの凸凹を大切にしようという」コンセプトを反映しているという。

「joyeux」とは、「幸せ」を意味するフランス語だ。公式のインスタグラムでは、店舗で働くダウン症や自閉症のあるスタッフのいきいきとした様子や笑顔を見ることができる。気になった方は、のぞいてみてはいかがだろうか。

 

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03. ダウン症のある人が描くアートが商品に。日本発のクリエイティブブランド「ヘラルボニー」

ダウン症のある人がアーティストとして活躍する事例も世界中で広がっている。

その代表例を作っていると言えるのが、「ヘラルボニー」である。「異彩を、放て。」をミッションに掲げる同社は、福祉実験ユニットとして、知的障害やダウン症のあるアーティストが描いたアート作品を、「商品」として世の中に届けるブランドだ。

障害のある方に“支援される”福祉実験ユニット、ヘラルボニーの創業者が語る「やさしさの哲学」


製作するのは、ネクタイをはじめ、ハンカチ、シャツといったファッションアイテム、さらにはホテルの内装デザインまで多岐にわたる。障害のある人々の描くユニークな色彩やパターンを最大限に活かした商品はどれも魅力的だ。現在では日本全国の作家や福祉施設路ライセンス契約を結び、オンラインや岩手県の実店舗、ポップアップストアなどで販売を行っている。

2020年の世界ダウン症の日には、ダウン症のある作家・八重樫季良(やえがし・きよし)さんのドキュメンタリームービー「描き、続ける。」を公開。岩手県花巻駅を彼の幾何学模様が特徴のアート作品でラッピングする実験的プロジェクト「HANAMAKI ART STATION」の様子を見ることができる。

また、2021年にはこの日に合わせ、ダイバーシティ東京 プラザでポップアップストアを開催。NPO法人アクセプションズとコラボして、ダウン症のある作家の描く作品を使用した商品を販売した。また、三井不動産と協働し、歩行に課題を抱えやすいダウン症のある人々のため、機能性のある靴をオリジナルなものにするタグのデザインワークショップも開催するなど、多様な取り組みを続けている。

ダイバーシティ東京 プラザでのワークショップの様子

靴のタグづくり ワークショップの様子

ヘラルボニー ダイバーシティ東京 プラザでのモデル撮影

イベントでは、プロのヘアメイクの協力を得てモデル撮影も行われた。

まとめ

いかがだっただろうか。こうした希望を感じさせる事例がある一方で、日本ではダウン症の人々の約5割が就労継続支援B型に分類される施設で働いており、その平均賃金は未だ月2万円に満たない状況だ。個性に合わせた活躍の場が広がると同時に、全体としての水準が上がっていくことにも期待したい。

最後に、2024年の世界ダウン症の日に先駆けて公開された動画を紹介したい。

動画のタイトルは、「ASSUME THAT I CAN(私にはできると仮定して)」。動画は、カナダのダウン症のある女優マディソン・テヴリンの挑発的な問いかけから始まる。

「Hey、バーテンダー。あなたは、私がマルガリータを飲めないと思ってるでしょ?だからあなたは、マルガリータを私に出さない。だから私は、マルガリータを飲まない。つまり、あなたの“思い込み”がリアリティになるってこと」

一人で暮らすこと、本気でボクシングをすること、シェイクスピアを学ぶこともそうだと彼女は言う。周囲が「ダウン症のある人々にはできないだろう」と勝手に思い込み、最初からその機会を遠ざけたり、良かれと思ってサポートしすぎたりしていることで、彼らの“本来の”可能性を奪っているかもしれない。

だが反対に、周囲が「できる」と仮定して機会を開けば、ダウン症のある人々にできることは、今よりも、もっとずっと多くなる。この動画は、そんな誰もが励まされるメッセージを、力強く伝えている。

【参照サイト】Brownies & downieS
【参照サイト】CAFÉ JOYEUX
【参照サイト】ヘラルボニー
【参照サイト】3月21日「世界ダウン症の日」|ダイバーシティ東京 プラザを舞台に、ダイバーシティな体験を。ダウン症のある作家の限定プロダクトを発表。
【参照サイト】Viral ‘Assume That I Can’ Down syndrome PSA fiercely punches back against harmful misconceptions

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