ケニアのスラム街で、子どもたちがフェンシングに熱中。路上の暴力に代わる選択肢へ

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中世騎士道の剣術文化として知られるフェンシングと、アフリカのスラム街。これらは一見まったく関連性がないように思える。

しかし今、ケニア・ナイロビの中でも貧しい地区として知られるフルマの路上が、真っ白な衣服とマスク姿でフェンシングをする少年少女たちの格闘場と化しているという。若者たちの正体は「ツァボラ・フェンシング・クラブ」に所属する人たちだ。

フルマにはトタン屋根の屋台や民家が建ち並び、バイクや荷物を乗せた車や、人々が忙しく行き交う。日々、薬物や犯罪、暴力などと背中合わせの状況で暮らしているスラム街の若者たちの中には、10代で妊娠し母親になる少女も少なくない。

フルマのコミュニティセンターで開催されるツァボラ・フェンシング・クラブは、ケニアのそうした危険な地域で暮らす若者たちにとって路上の暴力行為に代わる選択肢となり、さまざまな社会的圧力から逃れる道を切り開いているというのだ。

ツァボラ・フェンシング・クラブは、元ギャングからアスリートに転身し、のちにフェンシング・ケニア代表チームのコーチになったムブル・ワニョイケさんによって2021年に創設された。ムブルさんは友人2人の死という悲劇を経験したあと、南アフリカでトレーニングと教育を受けて、ケニア代表のフェンシング選手になった。

ムブルさんは、africanewsのインタビューの中でこのように話している。「わたしは犯罪に手を染めていましたが、犯罪は私を孤立させ、憂鬱にさせ、ストレスもたまりました。フェンシングを選んだのは、そんな犯罪世界から抜け出すためでした」

ツァボラ・フェンシング・クラブは、装備や機材が他国のように整っていない。しかしこれまで15人の才能あるフェンシング選手を輩出した。アルジェリアで開催される2024年夏季オリンピック予選に、メンバーがケニア代表として出場する予定だ。

同クラブでは現在、45人の若者たちがフェンシングの技術だけではなく、誠実さや規律といった美徳を養うための「ムタニ」という訓練を受けている。「ムタニ」を経たメンバーは次々と地域社会のリーダーになっているという。

ツァボラ・フェンシング・クラブは、メンバーの決意と地域社会の支援に支えられながら成長を続けている。年齢や性別に関係なく夢中になれるものに情熱を注ぐことは、希望につながる。それは、国の経済状況や設備の多さなどに関係なく、普遍のことなのではないだろうか。

【参照サイト】Tsavora Fencing Club
【参照サイト】This Fencing Club Is Giving at-risk Youth in Kenya an Elegant Alternative to Street Violence
【参照サイト】Sword fighting offers hope for youth in Nairobi’s poorest areas
【参照サイト】Fencing club in Nairobi creates uplifting opportunities for local youths
【関連記事】スケートする。スラムが変わる。ウガンダの貧困集落で羽ばたく子供たち
Edited by Megumi

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