ケニアのスタートアップ、再生プラからレンガを開発。ごみを暮らしのインフラに

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近年アフリカ地域では人口増加や都市化の進展により、捨てられるごみの量がますます増加していることをご存じだろうか。経済成長やライフスタイルの変化に伴い、プラスチックや電化製品など、特殊な処理技術を必要とする廃棄物も増えており、ごみ処理体制及び法制度が追いつかない現状がある。ケニアのナイロビはこうした問題を抱える都市の一つだ。街中ではごみが散乱している光景が見られ、公衆衛生の低下や環境汚染など、さまざまな問題を引き起こしている。

そうした中、同市発のスタートアップ、Gjenge Makersはプラスチックごみを再利用して製造するレンガを開発した。廃棄されたプラスチックと砂を原料とする本製品は、通常のコンクリートの5倍から7倍の耐久性を誇る。

 

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以前IDEAS FOR GOODでは、アルゼンチンの非営利団体EcoInclusionのペットボトルから作るレンガを紹介した。アイデア自体は非常に似ているが、今回紹介するGjenge Makersのレンガは、EcoInclusionのレンガが製造に必要としたセメントや添加物すらも必要としない点に革新性がある。また、廃棄物を資源として再利用する取り組みは地域に根付いてこそ環境負荷を削減することができ、アフリカ有数の世界都市・ナイロビにおける同社の取り組みには大きな意義がある。

同社を創業したンザンビ・マテさんは、元々石油業界でエンジニアとして働いていたが、毎日市内の路上に放置された大量のごみを見てうんざりしていたという。ケニアの環境省は、国内で年間60万トンのプラスチックが生産されていると発表しているが、消費された後にリサイクルされるのはごく一部だ。

ケニアの報道局KTNの動画で「政府がごみ問題を本格的に解決するまで待っていられなくなった」というマテさん。仕事を辞め、実家のバックヤードでプラスチックごみの再利用実験を始めた。その熱意から奨学金を得られたことでアメリカの大学へ進学が実現し、在学中にプラスチックを原料としたレンガの製法を開発した。

 

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同社は、原料のプラスチックを包装工場やリサイクル業者から調達している。工場にとっては廃棄物の処理費用を削減できるメリットがあるため、一部のプラスチックごみは無料で提供してもらえるという。これにより、同社もきちんと利益を出した上で販売価格を下げることができ、ユーザーである住宅の所有者や学校まで含めた「三方よし」が実現されている。

レンガの製造工程は極めてシンプルだ。粉砕されたプラスチックと砂を混ぜて高音で熱した後、それを鋳型に流し込み、機械で圧縮する。一度溶解したプラスチックが砂同士を繋ぎ合わせることでレンガが成形される。プラスチックは元々繊維素材のため、レンガの強度が高くなり、完成品の融点は350度を超える。さらに、従来のレンガに比べると半分の重量しかないため、運搬や作業にかかる時間を削減でき、コストパフォーマンスも良い。

同社はこれまでに20トン以上のプラスチックをリサイクルし、地域のコミュニティ内に112の雇用機会を創出した。現在はナイロビで約1,500個のレンガを毎日生産しているが、今後は他のアフリカの国々でも生産販売を拡大すると同時に、同様の事業を各地で行う熱意のある人々を支援していきたいとしている。また、現在は地面舗装用レンガのみを生産しているが、今後は建築用ブロックの開発にも力を入れていく予定だ。

生態系や景観を傷つけてしまうプラスチック廃棄物が地域内で再利用され、暮らしを支えるインフラ材に生まれ変わる。生活者の根源的な問題解決と基本的なニーズのどちらにも応えるGjenge Makersのレンガは、今後アフリカが持続可能な発展を遂げる上でますます活用されていくだろう。

【参照サイト】Gjenge Makers
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Edited by Kimika

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