ロンドン各地の「自動車制限エリア」が市民を健康に。地域経済も活性化

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近年、環境負荷を抑えるための取り組みが世界の都市で行われている。食品ロスやプラスチック包装を削減するなど、各家庭や個人でできることもあれば、地域ぐるみでできることもある。歩行者や自転車に寄り添い、交通量を制限した通りをもうけて、より住みやすいまちづくりを目指す「Carfree City(カーフリー・シティ)」もその一つだ。

イギリス・ロンドンは1970年代からLow Traffic Neighbourhoods(交通量制限地域、以下LTN)が存在しており、2020年春以降さらに多くのLTNが導入された。LTNプロジェクトを推進しているのは、運輸省から資金提供を受けているTransport for London(ロンドン交通局)。さらに、ロンドン交通局はその資金をLTNの設置場所を決める地方評議会に提供している。

ロンドン交通局のデータによると、ロンドンの路上で死亡する人の80%以上は、徒歩、自転車、バイクの利用者だという。交通量が多いロンドンで、市民は「徒歩や自転車は自身の健康や環境に良いのはわかっているが、それで移動するのは危険」というジレンマを抱えがちなのだ。LTNを設けて道路を車止めや花壇で封鎖し、近道のためだけに細い道を通り抜ける自動車がなくなれば、自転車や歩行者との衝突事故も減る。

Image via Transport for London

ウェストミンスター大学のレイチェル・オルドレッド教授が率いるチームは、LTNの経済効果を調査。LTN導入地域では自転車や歩きでの移動が増え、それに伴うであろう地域住民の健康改善などによる経済的利益が、LTN導入コストの10倍にもなる可能性があることがわかったのだ。

現在、LTNを導入している自治区は、カムデン、クロイドン、イーリング、ハックニー、ハウンズロー、イズリントン、ランベス、ニューハムなどだ。2020年以降、ロンドン市内とその周辺では19のLTNが導入されており、その中でもハックニー地区に全体の70%のLTNが存在する。

LTN導入による効果や好影響が顕著になるのは1・2年後ということだが、今後ロンドン周辺の各地区ではさらに多くのLTNが導入される予定だ。ロンドン交通局は地方自治体や救急隊と協力して、LTNが緊急サービスを妨げたり、交通量を他の地域に押しやったりすることがないよう、道路の変更などを行っている。

交通量を減らして道路を歩きやすくし、自転車での移動を促すことは、大都市の空気の質を改善するのにも役立つ。まずは、住民の動線に目を向けることこそが大事なのかもしれない。しかもそれは、地域の経済効果を生む可能性につながっていくのだ。

【参照サイト】What is an LTN? Study finds health benefits from low traffic schemes are up to 100 times greater than costs
【参照サイト】Health gains of low-traffic schemes up to 100 times greater than costs, study finds
【参照サイト】Low Traffic Neighbourhoods: what, why and where?
【参照サイト】Road safety data – Transport For London
【参照サイト】Journal of Transport & Health – Science Direct
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Edited by Megumi

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