スマート・アーバニズムの最前線。アムステルダムの公共交通が大気汚染の「監視装置」に

Browse By

近年、世界の都市では住民の暮らしをより豊かにするまちづくりのために「スマート・アーバニズム」が取り入れられている。スマート・アーバニズムとは、サステナビリティや効率性、住民の生活の質向上を目指した都市設計において、テクノロジーとデータを活用する取り組みのことだ。

自転車大国と呼ばれるオランダもスマート・アーバニズムを取り入れている国の一つだ。首都のアムステルダムでは公共交通機関が発達しているため、自動車を利用するよりバスやトラム、電車、自転車を使って移動する人が多い。しかし、地域や通りによっては、公共交通機関を使う住民が大気汚染、騒音、気温の変化など、さまざまな環境リスクに直面しているのが現状だ。

そこで、住民のより快適な暮らしを目指し、アムステルダム高度都市ソリューション研究所(AMS)と米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、大規模かつ費用対効果の高い「ドライブ・バイ」環境センシング戦略を提案。バスやトラムにセンサーをつけ、街を移動しながら汚染レベルを継続的に監視し、環境の「番犬」を兼ねてもらうという取り組みを始めたのだ。

この新しいアプローチは、クロッキング・エミッション・プロジェクトと呼ばれ、タクシーにセンサーを取り付けたニューヨークの先行研究をベースにしている。主に移動中の車両につけたセンサーを利用し、リアルタイムで環境データを収集・分析することで、都市が自治体のさまざまな問題に対処できるようになるのだ。

Image via Shutterstock

交通センサーからのデータ分析では、渋滞のホットスポットを特定し、交通の流れを最適化することができる。これにより大気汚染の改善や燃料の削減、移動時間の短縮が可能になる。また、SNSのデータから市民の感情を分析し、潜在的な問題が深刻化する前に対策できるよう対応する。

アムステルダムでは、ビッグデータの分析と管理を重視している。市のデジタルプラットフォームでは、環境、交通の流れ、医療データ、都市計画、公共空間の利用など、さまざまな情報がオープンデータとして提供されている。市民が都市開発プロジェクトに積極的に参加できるよう促す狙いだ。

アムステルダムでは、最終的に公共交通網のあるすべての都市における「ドライブ・バイ」環境センシング戦略が導入できるよう目指されている。大気の質や騒音レベルのデータをもとに、都市の最適化が応用されればされるほど、住人がより快適な暮らしを構築できるようになるのだ。

近隣のイギリスでは、ハイテク自転車ライトを使って道路のデータ分析をすることで街をより安全で住みやすくしようとする取り組みもある。アムステルダムの革新的なアプローチも、そこに住む人と都市環境の両方に利益をもたらす、非常に有効なツールとなり得るだろう。

【参照サイト】Driving cleaner cities: Using public transport to measure pollution in real-time
【参照サイト】Smart Cities: Beyond the Buzzword
【参照サイト】Amsterdam Smart City: A World Leader in Smart City Development
【参照サイト】Digital Communications and Networks
【参照サイト】Clocking Emissions
【参照サイト】Senseable City Lab :.:: Massachusetts Institute of Technology
【関連記事】ハイテク自転車ライト「See.Sence」道路のデータ分析で英国流まちづくりに寄与へ
【関連記事】Internet of Things(モノのインターネット)とは・意味

Edited by Megumi

FacebookTwitter