いま世界中の有名観光地が、軒並み「オーバーツーリズム」と呼ばれる現象に喘いでいる。
「オーバーツーリズム」とは、日本では「観光公害」とも言われ、特定の観光地において、訪問客の増加が、地域住民の生活や自然環境、景観等に対して限度を超える負の影響をもたらしたり、観光客の満足度を著しく低下させるような状況のこと。
旅の誘いの記事のはずなのに、こんなネガティブな書き出しで大丈夫?とも思うが、ぜひもう少しお付き合いいただきたい。
こうした状況は日本の観光地も例外ではなく、京都、鎌倉、渋谷など、有名観光地は人で溢れかえり、実際に観光地を訪れると、マナー遵守を訴える看板を見かける機会も増えた。
近代化により交通手段が発達し、観光が効率化するにつれて公共交通機関を使って一斉に同じ場所を目指し、まるでマークシートを隅から塗りつぶすかのように観光スポットを次々と通り過ぎていく、そんなスタイルの観光が登場したこともオーバーツーリズムの要因の一つだ。有名スポットに関する情報がメディアやSNSで拡散されると、更にそこに人が集中するという世の中の情報化の流れも、オーバーツーリズムに拍車をかけている。
現実として、観光客に対して現地住民がこれ以上の来訪を拒む意思表示をしたり、観光地の入域規制が始まった地域もある。
地域住民が心地よく暮らす権利と、訪れたい場所を訪れる権利。その2つは相容れないものだろうか。そしてオーバーツーリズムに対して、旅人はどう向き合えばいいのだろうか。
広島で気づいた、オーバーツーリズム時代の観光のあり方
Livhub編集部は、2024年2月、広島県広島市を訪れた。そこで出会ったのはそれぞれに広島の魅力を伝えるために活動する、個性溢れるローカルガイドたち。ガイドたちの提案する旅や町自体がストーリーに触れ、対話をするなかで、私たちはオーバーツーリズム問題が溢れる現代の旅の可能性を目にした。
オーバーツーリズムによって生じる課題のなかには、環境保護や混乱解消などの目的で、致し方なく「規制」や「注意喚起」といった方法で解決しなくてはならないものもあるだろう。しかし、そうした対策だけでは訪問者と地域住民の間の溝は広がるばかりではないだろうか。
地域住民が心地よく暮らす権利と、訪れたい場所を訪れる権利。この二つを本当の意味で共存させるためには、画一化してしまった観光を多様化させたり、訪問者と地域住民をつないだりしながら、両者をポジティブにするような工夫が必要なのではないか。
例えば有名観光スポットから少し距離を置き、他の観光客の行動と自分の旅程を少し「ずらして」みる。旅先で出会う人とのんびり対話しながら、その場所で暮らすように過ごし、土地の風土や価値観に浸り、五感で味わう。そして旅先から受け取った「恩」は、地域にプラスになるよう「恩送り」をする。
こういったアプローチは、旅人と地域住民を分断することで問題を解決しようとはしない。むしろ旅自体が人と人をつなぎ、関わるモノ、コト、ヒトを「ポジティブ」にするような旅だ。そんな旅が当たり前になれば、観光客が地域住民から「NO」を突きつけられることは少なくなるのではないだろうか。
それが、訪問者と地域住民の双方が、観光によって微笑む姿を見せてくれたひろしまで、私たちが感じたことだった。
この地で沸々と沸き立ちはじめている観光の可能性を伝え、これからの観光や旅のかたちを考えたい。そんな想いから企画したのが、この「ひろしまリジェネラティブツーリズム」だ。
つながりを再生する旅
「ひろしまリジェネラティブツーリズム」の「リジェネラティブ(regenerative)」とは「再生、再生的な」、もしくは「繰り返し生み出すこと」を意味する。
もともとは農業の分野において使われ始めた言葉だが、現在では様々な分野の再生的な取り組みに使われるようになった。今回の旅では、この「リジェネラティブ」という言葉を広義にとらえ、その言葉に広島という町が辿ってきた再生の歴史も重ねている。
具体的には、「地域の風景の再生」「広島の物語の再生」「自分自身の再生」の3つの再生を軸にしながら、「つながりはじめる、再生と対話の旅」と題して、広島市内と広島県湯来町を2泊3日で旅する。
歴史と歴史、人と自然、旅人とローカル、、関心と無関心。分断されてしまったもの同士を対話でつなぎあわせる「これからの旅のかたち」を、参加者もガイドも運営も一緒になって探し、考える旅としたい。
旅の案内人や体験内容などは以下にて紹介する。
今回のひろしま旅の案内人
石飛 聡司(ガイドネーム:トビー)
「sokoiko!」代表。広島のローカルな魅力を生かす事業を創出したいとの想いで、2017年より広島のローカルを巡るサイクリングガイド ツアー 「sokoiko!」を観光業界での経験ゼロから開始。元々はインバウンドの旅行者を案内するサービスとして立ち上げたが、今では日本人のお客様をはじめ、世界中の方がたくさん参加するツアーとなっている。この地域にずっと伝わっている地元の人でなければ知らないようなエピソードや、この街が辿ってきたドラマを伝えていけるようなストーリーツアーとして、1本の映画を観るようなツアーをコンセプトにお客様と一緒に街の中を走り回っている。(facebook)
川口 康太(ガイドネーム: ステファン)
鹿児島生まれアメリカ育ち。広島歴7年で、好きな景色は瀬戸内に沈む夕日。総合商社、ベンチャー系ホテル運営企業を経て、現在はフリーランスのトラベルデザイナー兼森林浴ファシリテーターとして、広島・屋久島・種子島で活動中。ビジョンはゲスト(個人)、地域(コミュニティー)、世界をつなぎ唯一無二の時間と空間を共有すること。趣味は旅(日本全都道府県、世界70カ国訪問)、サーフィン、森林浴、茶道、ゴルフ。(facebook)
佐藤 亮太(ガイドネーム:とんちゃん)
1985年生まれ、愛知県岡崎市出身。サッカー業界出身で、東日本大震災をキッカケに広島へ。温泉が大好きで2014年に広島の奥座敷・湯来町へ移住。アドベンチャーツーリズム(AT)を軸に、シャワークライミング、サウナ、eMTBツアーなどの開発や、温泉街再生に取り組んでいる。また、広島で広域的にATツアー造成・販売をするため、(一社)Hiroshima Adventure Travelを設立し、業務執行理事に就任した。趣味はサッカー観戦、温泉、サウナ、クラフトビールなど。(facebook)
三村 理紗(ガイドネーム:リリー)
1987年、広島生まれ。一般社団法人My Japan代表理事。広島の伝統的工芸品熊野筆製造会社で生まれ幼少期より筆作りや書道、茶道、生け花など様々な日本の伝統文化に触れて育つ。日本文化を守り後世へ繋げるため(一社)My Japanを創業。広島の観光地ではないローカルな魅力を伝えるべく「二葉山」という広島を守り続けてきた山を舞台に絶景と朝ごはんを楽しむ早朝ガイドツアー「Asageshiki」をプロデュース。観光を通じて自然環境を保全し地域を再生する循環型の再生型ツーリズムを目指し活動中。(facebook)
運営チーム紹介
飯塚 彩子(いいづか あやこ):ハーチ株式会社 Livhub編集部
旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジンLivhub編集長。慶應義塾大学SFC卒。新卒でインターネット広告代理店にて東京本社とシンガポール支社に合計5年勤務。その後パートナーの転勤に伴いインドネシア・ジャカルタに2年在住した後、出産を機に転職し現職。趣味は本屋滞在と茶。(facebook)
石塚 和人(いしづか かずと):ハーチ株式会社 Livhub編集部
旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジンLivhubの編集者・ライター。複数の業界でプランニングやイベント企画を本業としながら、副業としてライター業をスタート。その後、ハーチ株式会社にて現職。趣味は低山ハイクとカメラ、家庭菜園、格闘技観戦など。現在、神奈川と長野の二拠点居住中。
(facebook)
旅で巡る再生の体験
【町のストーリーの再生】ひろしまサイクリングsokoiko!ピースツアー(広島市内レンタサイクル散策)
「一本の映画を見るように」地域を巡り、その中で地域の方との交流や様々な体験をしていただけるように構成されたサイクリングツアー。今回は広島市内を電動自転車で巡り、広島の戦前・戦中・戦後復興の被爆遺産を巡る予定。単なる観光スポットだけではない、自転車によるコース設定ならではの地域のストーリーと広島の想いを感じるアクティビティと対話を楽しんで欲しい。(sokoiko!)
【ものづくりの再生】広島の伝統工芸(広島漆芸)
太田川の流域に発達した町である広島には、その流域の恵みや木材などの物流インフラとしての利便性を生かし、古くからものづくりの町としての歴史がある。かつては刀剣や仏具などをつくっていた職人たちが、時代の変化とともにその生業や技術を変化させ、時代に沿った広島独自のものづくりの技術とその価値を伝え続けている。今回の旅では「株式会社高山清」の広島漆芸作家である高山尚也氏の店舗兼アトリエを訪問する。
高山 尚也(漆芸家)
広島の老舗仏壇店の次男として仏壇と共に育った高山尚也は、代々引き継いだ伝統的工芸品・廣島仏壇の塗師の技術と、京都での修行時代に習得した蝋色磨きの技術を生かし、漆芸家・高山尚也として、「生活の中に漆を」をテーマに独自性の強い作品を生み出している。2023年に広島県で開催されたG7広島サミットでは、「曙」が G7首脳配偶者贈答品として選ばれ、「伝」が開催都市からのG7首脳贈答品として選ばれた。(株式会社高山清)
【地域の風景の再生】二葉山(二葉山山頂で野点と絶景を楽しむ「Asageshikiツアー」)
自然のパワーで全身を研ぎ澄ませながら、歴史ある神社を巡り、山頂を目指す。山を登ると、広島市内の美しい街並みと瀬戸内海、そして宮島まで見渡せる景色が広がる。そんな景色を眺めながら、広島の食材にこだわった朝ごはんを食べる。至福の時を彩る〆は、野点(のだて=野外で点てる茶道)で茶を楽しむ。広島駅から徒歩10分の霊山「二葉山」を舞台にした「Asageshiki ガイドツアー」。
(今回は特別プランとしてツアーの中で二葉山の登山道再生作業の一部を体験するワークショップも開催予定)
ちなみにこのAsageshikiツアーの売上金の一部は、二葉山の森や登山道の整備費用に充てられ、またその整備作業はAsageshikiツアーを運営する「一般社団法人My Japan」と広島東照宮関係者、そして地域コミュニティの皆さんにより支えられている。そのストーリーに関してはぜひこちらの取材記事からどうぞ。(Asageshiki)
【自然とのつながりの再生】湯来町アドベンチャーツーリズム体験「シャワークライミング」
太田川の源流が流れ、「広島の奥座敷」と称される湯来町。この木々の色を映した翡翠色の清流の水こそ、湯来の最大のアイデンティティ。この場所の川の流れに身を任せて、ただ浮かんでみたり、岩肌にしがみつきながら滝を登る。草木をかき分けながら、柔らかい地面を踏みしめて山頂を目指して山を登る。都会の喧騒から離れ、川の流れに身を委ねながら自分自身と自然とのつながりを再生する体験アクティビティ。
*子供からお年寄りまで参加可能なレベルのアクティビティです。
*アクティビティに必要な道具はレンタルとなります。水着のみご用意ください。
(Be A PLANET:Adventures “YUKI” in Hiroshima)
【温泉街の再生】19年振りに再生を遂げた湯来町の温泉「誠の桧湯(まさのひのきゆ)」
1989年(平成元年)7月に公共の無料露天風呂としてオープンした「湯元」。観光客減少による運転資金不足や、利用者のゴミ捨て、騒音、イタズラなどのマナー違反なども影響し、2000年(平成12年)3月に公共露天風呂「湯元」は閉鎖。それから約20年にわたり、全く利用されない状況が続きましたが、今回の旅のガイドを担当していただく佐藤 亮太さんを中心にして行われた「湯来温泉湯元復活プロジェクト」で「誠の桧湯(まさのひのきゆ)」として復活。今回は、その復活プロジェクトのストーリーについて話を伺いながら、実際に復活した温泉も体感する。(誠の桧湯公式サイト)
【酪農の再生】サゴタニ牧農
サゴタニ牧農(砂谷牛乳)は、広島県広島市湯来町に自社牧場 サゴタニ牧場(久保アグリファーム)を有する昭和25年創業の牛乳メーカー。現在、牧場の不耕作地を放牧地に転換する「牛の棲む森プロジェクト」の取組みや共同草地の活用を進めている。牛を飼うことを中心に、食と農全般に関わっていくことを意味する造語「牧農」という言葉を掲げながら、酪農を未来に残し、自然循環と経済循環の両立を目指している。今回の旅では実際に牧場を視察しながら、サゴタニ牧農の3代目である久保 宏輔さんに話を伺う。(サゴタニ牧農公式サイト)
旅の行程概要
- Day1:12時 JR広島駅南口集合 →サイクリングツアー(sokoiko!) →広島工芸見学
- Day2:二葉山(Asageshiki) →湯来交流体験センター →湯来町シャワークライミング →湯来町誠の桧湯
- Day3:かまど体験→ 湯来町サゴタニ牧農 →広島市おりづるタワー →広島駅にて解散(16時広島駅解散を予定)
*詳細な時間と行程については、申し込み締切後にメールにて送付予定。
こんな方におすすめ
- リジェネラティブツーリズム、再生型観光に関心がある方
- 地域の魅力を新たに見出すツアー醸成に興味がある観光業の方
- 学校機関関係者、観光学部関係者の方
- 観光業関係者、NPO、DMO、DMCなどに関わる方
- ダイアログツーリズム(対話型観光)に関心がある方
- ローカルガイド付きの旅に魅力を感じる方
- その他、広島に興味がある方ならどなたでも
このツアーで体験できること
- リジェネラティブツーリズム、コミュニティベースドツーリズムの事例を体験する
- オーバーツーリズムの対策や、これからの観光のヒントを得る
- 有名観光スポットだけに頼らない、地域の魅力の発見手法やツアー醸成のノウハウを体感する
- ローカルガイド視点による、有名スポットだけではない広島の多様な魅力と歴史の再発見
- 訪問地のローカルとの対話をしながら旅をするダイアローグツーリズム
- 自然に浸り、内なる自然を育みながら自己変容を体感する旅
旅の概要
日程 | 10月9日(水)〜10月11日(金)(2泊3日) *10月4日に事前のオリエンテーションと顔合わせ、10月20日に振り返りイベントを予定(いずれもオンライン開催) |
場所 | 広島県広島市、広島県湯来町周辺 |
ツアー代金 | ¥88,000(税込) |
ツアー代金に含まれるもの | 2泊分の宿泊費、現地ガイド費用、現地運送機関料金、アクティビティ費用、レンタル費用、2日目夕食、3日目朝食、旅行保険、旅行取扱手数料 |
ツアー代金に含まれないもの | その他上記項目以外の全ての費用(現地までの交通費、上記以外の食事費用、宿泊施設滞在中の諸費用(クリーニング代、ミニバーや電話代等)、飲み物に関する費用) |
キャンセル料金 | 旅行契約成立後、お客様の都合で契約解除される際は次の金額を取消料として申し受けます ・旅行開始日の前日から起算して30日前から3日前まで:旅行代金の20% ・旅行開始日の前々日~当日:旅行代金の50% ・旅行開始後または無連絡不参加:旅行代金の100% |
定員 | 8名(最小催行人数3名)*申し込み順の受付、確定となります |
申込期間 | 2024年9月26日(木)17:00まで *定員に達し次第、早期に募集を締め切る場合がありますので、ご了承ください |
主催 | Livhub(ハーチ株式会社) |
共催 | 一般社団法人Hiroshima Adventure Travel |
ガイド言語 | 日本語 |
旅行取扱 | ひろしま湯来トラベル(広島県知事登録旅行業 地域 – 450号) |
プログラム内容に関するお問い合わせ先 | contact@livhub.jp |
宿泊場所について
*2泊分の宿泊先を運営が事前に手配します。場所などの詳細に関してはお申し込み後、追ってメールにてお知らせいたします。
お申し込み先
【お申込みURL】https://forms.gle/m5wUUS1A96tSd9nR8
【お申込み期日】9月26日(木)17:00まで