海賊がプラごみをハント。ハンガリー世界遺産で開催される、池の“お宝”探し大会

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自然界におけるプラスチックごみの問題といえば、どんな光景が浮かぶだろうか。海面で漂うビニル袋や、海底に沈んでいくごみ、海岸に打ち上げられた漂着物など、海における課題を思い描く人が多いかもしれない。

だが、プラスチックごみの課題は海のない国でも抱えている。東欧ハンガリーでは、池にもプラスチックごみが堆積しているというのだ。これを、市民に「海賊」になってもらうことで解決に挑んでいる企画がある。

同国南部にある人造湖・ティサ湖で、年に一度開催される「PETカップ」だ。PETとは、ペットボトルなどで知られるポリエステルの一種である「ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene Terephthalate)」の略。

参加チームは「PET海賊」となってカヤックやボートに乗り込み、湖に潜むお宝を探し求める。そのお宝が、水中のプラスチックごみだ。より多く集めたチームが優勝となる。2024年は9トン近いごみが集まり、ボランティアによって素材と色ごとに分別された。

ドナウ川でのイベントも運営するプロジェクトリーダーのGergely Hanó氏はEuronewsの取材に対し「これらのごみは上流の国から来ています。ドナウ川では1500トンのプラスチックごみが流れていき、ティサ湖では250トンが見つかります。そのうち年間100トンほどを、私たちで止めることができるのです」と語った。

また参加者らは、「今年は子ども用の自転車を見つけました」「葦の根本にある草を持ち上げると、いつも大量のごみが見つかります」と、語った。一見楽しそうにごみを集める参加者たちだが、少なからずごみの種類や量の変化を目の当たりにしているようだ。

プラスチックごみが入った大きな袋を乗せたボートと、楽しそうな参加者の様子

プラスチックごみが入った大きな袋を乗せたボートと、イベントを楽しむ参加者の様子|出典:Euronews

集まったごみを、ボランティアが色別に分けていく

集まったごみを、ボランティアが色別に分けていく|出典:Euronews

このイベントは2013年から10年以上続いており、国内でも有数の自然を廃棄物による汚染から守るために開催され始めた。実はティサ湖は、ユネスコの世界遺産に登録されているホルトバージ国立公園の一部。普段はエコツーリズムとしてカヌーツアーを開催するなど、自然に恵まれた地域なのだ。

つまり管理された地域であるため、他の池と比べてプラスチックごみの量は少ない方だという。それでも、一斉清掃を10年近く続けた現在でさえ1年間で9トンのごみが集積するのは驚きだ。

同じように、海や河川に捨てられてしまったごみをエンターテインメントとして回収する取り組みは、オランダフィンランドなどでも開催されている。

ハンガリーとは反対に、日本は海に囲まれた島国だ。源泉から海まで、すべて一つの国に収まってしまうからこそ、課題意識を持ちにくい背景があるかもしれない。

一方で、かつて海賊がいたと言われ、漫画『ONE PIECE』が生まれた国でもあるのが日本。海洋プラスチック問題に取り組む海賊たちが国内で現れたならば、是非とも仲間になりたい。

【参照サイト】‘PET Pirates’ Remove Seven Tons of Trash from Hungarian Lake in Plastic Picking Competition|Good News Network
【参照サイト】‘PET Pirates’ remove seven tonnes of rubbish from Hungarian lake|euro.news
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