音楽にカラフルな装飾。最期を祝う“ポジティブな葬儀”がイギリスでトレンドに

Browse By

人生にはいくつかの儀式がある。日本では「冠婚葬祭」と呼ばれるものがそれにあたるだろう。その中でも葬式は、自分の家族を含めお世話になった人が一堂に会す場だ。あなたは棺の周りで、人々に涙してほしいだろうか。それとも会場全体が笑顔に包まれていてほしいだろうか。

そんな葬儀をめぐって、イギリスで興味深い傾向が明らかになった。それは伝統的な形式での葬儀に代わって、「人生の祝福の場」として自分の葬儀を行ってほしいと希望する人が増加していることだ。

Co-op Funeralcareが2024年に実施した調査によると、回答者の68%にあたる約3,800万人がこの考えに同意しているという。2019年の調査では、回答者のうち58%が同様の意見を持っていた。

現在のトレンドとして、故人の人生を祝うカジュアルで個性的な葬儀が人気を集めているそうだ。音楽、カラフルな装飾、そして個人的な要素を取り入れることが一般的になってきていおり、中には、「きらびやかな棺に入れてほしい」「会葬者にフットボールのシャツを着てほしい」などの要望も。葬儀が執り行われる場所も、パブ、農場、森の中、ロンドンバス、クリケット場などさまざまで、亡くなった飼い主の葬儀にペットが招待されることもある。

さらに、多くの人々が環境に配慮した葬儀を選ぶ傾向も強まっている。イギリスでは再生可能な素材を使用した棺や、自然に還るコンポスト葬などの「グリーン葬儀」が人気だ。

こうしたトレンドを牽引するのは、ミレニアル世代などの若い世代であり、彼らはオリジナル要素が強い葬儀の形式を好む傾向にあるという。葬儀のプランニングにおいても、事前に自身の希望を詳細に記録する人が増えている。

「死」は暗いテーマとして扱われることも多いが、「死を想うことで、今を大切に生きることができる」とするメメント・モリの考え方がある。特にヨーロッパではカジュアルに「死」について議論するデスカフェも広がっている。

自分を失った悲しみに暮れるのではなく、涙だけではない葬儀で、自分の人生を最後に肯定してもらいたい──そんな新しい葬儀の形は、私たちが「よりよく生きること」を改めて考えさせてくれるかもしれない。

【参照サイト】Go your own way: Funerals are a celebration of life according to 38 million Brits
【参照サイト】‘Celebrations of life’ increasingly replacing traditional funerals in UK, study shows
【関連記事】メメント・モリ(memento mori)とは・意味
【関連記事】よく生きるためには「死」を想え?ヨーロッパの最新デス・テック【欧州通信#27】
【関連記事】オランダ発、人を土の栄養に変えるコンポスト棺桶
【関連記事】火葬よりエコ?イギリスで始まる水の葬儀「リソメーション」

FacebookTwitter