戦地の悲しみも夢も。ウクライナの子どもたちがカメラで日常を撮るアートプロジェクト

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2022年から、世界中のメディアが報じてきたロシアによるウクライナ侵攻。メディアの報道などを通じて私たちは戦地の状況に思いを馳せるが、ニュースから戦争のすべてを知ることなど不可能だ。渦中にいる子どもたちは、ウクライナの惨状をどのような視点で捉え、どう受け止めているのだろうか。

ウクライナの子どもたちの視線で捉えられた情景を物理的な形で伝えたい。創造性が夢を実現するための強力なツールになることを学んで強く生きてもらいたい──そんな思いから生まれたのが、アート・プロジェクト「Behind Blue Eyes(ビハインド・ブルー・アイズ)」だ。

このプロジェクトは、ロシア軍から解放されたウクライナ・チェルニヒフ地方ルカシフカ村の人々を支援していたボランティアチームによって発案された。彼らは、地元の子どもたちが戦争の恐怖にさらされていながらも、日常の暮らしの中に希望や喜びを見いだしていることに気づいたのだ。

Behind Blue Eyesというプロジェクト名には、「表向きは完全に普通に見えるが、実際には苦しんでいる状態」という意味があり、また「Blue-eyed」という言葉自体も、天真爛漫さや幼さを指す言葉だ。このプロジェクトはそんなウクライナの子どもたちの状態に焦点を当てている。

そこで、チームメンバーが使い捨てカメラを提供し、一週間にわたり村の子どもたちに日常を撮影してもらうよう依頼したところ、その写真は多くの人の心を打った。

13歳のBohdanさんによって撮影された画像  Image via Behind Blue Eyes

10歳のMashaさんによって撮影された画像  Image via Behind Blue Eyes

10歳のMashaさんによって撮影された画像  Image via Behind Blue Eyes

12歳のDianaさんによって撮影された画像  Image via Behind Blue Eyes

15歳のTanyaさんによって撮影された画像  Image via Behind Blue Eyes

10歳のVaylaさんによって撮影された画像  Image via Behind Blue Eyes

子どもたちは、戦争の惨状だけでなく動物や花も撮影していた。それぞれの写真に喜びや悲しみ、家族との日常の瞬間が写し出され、カメラのレンズを通して見る戦争とその余波が率直に示されていた。

Behind Blue Eyesプロジェクトの共同創設者アルテム・スコロホドコさんは、Creative Boomの取材のなかでこう話している。

多くの子どもたちにとって、このプロジェクトはワクワクする冒険だったようです。古い使い捨てカメラは記録しているものが見えないので、今の世代の子どもたちにとってはまったく新しいものでした。子どもたちは大喜びで、写真を交換していました。

Behind Blue Eyesのボランティアたちは、子どもたちが撮影した写真が出版され売上を得ると、そのお金で子どもたちの夢をかなえた。自転車やスマートフォン、電動スクーター、ペットのチンチラなどが、子どもたちに手渡されたのだ。

Behind Blue Eyesは子どもたちの意識と好奇心を目覚めさせ、未来に対して子どもたちが明るい展望を描くきっかけを提供することを活動目的としている。ロシア軍から解放された地域で暮らす1,350人以上の子どもたちが撮影した写真は2,500枚以上にのぼる。それだけ、多くの子どもたちの夢がかなえられたということになる。

彼らは今日も解放されたばかりの村々を訪れ、戦争でトラウマを抱えた子どもたちへのサポートに尽力しながら、ウクライナ各地で子どもたちと共にこの写真プロジェクトを継続している。

あなたは子どもたちの写真を見て何を思っただろう。

【参照サイト】Behind Blue Eyes
【参照サイト】En Ukraine, cette asso offre des appareils photos jetables aux enfants pour immortaliser leur quotidie/creapills 
【参照サイト】Behind Blue Eyes: Ukrainian children photo their lives in joyful charity art project/Creative Boom 
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Edited by Megumi

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