サーキュラーエコノミーは「リサイクル素材を使おう」という話ではない──そんな議論も高まりつつある昨今。循環やサーキュラーという言葉が急速に広がり始め、まさに今その具体的な実践例が求められているのだ。
また、資源を循環させることは必ずしも「新しい技術」を必要とするのではないということも心に留めておきたい。大切にすべきポイントは、新たな資源をできるだけ採掘せず、一度手にした資源は何度も使い続けるということだ。つまり企業の活動に置き換えるならば、一度作った製品は可能な限りその形のまま、長く使い続けられるようなデザインやサービスを展開するということになる。
では、どうすればそれを実現することができるのか。コスメティックブランド・SHIROが、一足早くその実証試験に踏み出している。同社は2024年8月8日から10月31日まで、「SHIRO リユースプロジェクト」を掲げて同社の使用済みガラス容器の回収を行っている。回収した容器を洗浄し再利用するスキームの確立に向けた取り組みだ。
注目すべきは、リサイクルではなく「リユース」に取り組むという点だ。ブランドによる回収プログラムでは、主に回収した容器が素材化され、同じ製品が製造されることが多い。しかし同社は、回収した容器を洗浄し、再び充填することで、さらなる環境負荷の軽減を目指しているのだ。
この取り組みには「容器に香りや油分が付着しやすい」という、コスメ製品ならではの壁があった。そこで同社は、牛乳をはじめとしたびんの回収・洗浄を行う企業と連携を組むことによって、その壁を超えようとしているという。日本の昔ながらの知見は、今でも大きな役割を担っているのだ。
回収場所は全国のSHIROの25店舗と、協働するECOMMITが設置する回収ボックス「PASSTO」などが対象となり、SHIROの店舗では、使用済みガラス容器を一つ持ち込むごとに300円分のクーポンまたは好きな香りのファブリックソフナー2点の特典がついてくる。さらにガラス容器と一緒に、不要になった衣類も持ち込むことで、500円分のクーポンが提供される。詳細はSHIRO リユースプロジェクトのキャンペーンサイトから確認が可能だ。
今回はガラス容器だけが回収対象だが、今後プラスチック容器のリユースも目指していくという。回収を通じて、リユースしやすいプロダクトデザインが生まれていくことにも期待したい。
同社の一連の取り組みは、資源回収事業を手がけてきたECOMMITや、びんの洗浄を担ってきたトベ商事など、多様な立場の組織との連携があってこそ生まれた。これまでリニア型であった経済を、循環型に変えていくためには、今まで話したこともないようなアクターと協働することも必要だ。
こうして、使い捨て型の経済で当たり前とされてきた範囲から外に踏み出す動きは、業界全体のほんの一部に過ぎないかもしれない。しかし着実に、そんな“当たり前”から脱却しようと試行錯誤する企業が一つ、また一つと増えている。
【参照サイト】SHIRO リユースプロジェクト
【参照サイト】REUSE SHIFT
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