「値段は消費者が選べます」The Ordinaryが商品価格の“3択制”を試行

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「価格改定のお知らせ」という見出しを目にしたとき、多くの人は値上げを想像するだろう。物価高が続く中、2024年もさまざまな企業が「コスト高により……」と苦しさを滲ませ、値上げを伝えている。化粧品・スキンケアブランドも、同様に改訂を発表している業界の一つだ。

食品とは違い、生活必需品ではないコスメ類は、購入を諦める人もいるかもしれない。これからメイクやスキンケアは、経済的に豊かな人だけが広い選択肢を持つ「贅沢品」になってしまうのだろうか。

こうした状況に一手を打ったのが、カナダ発のスキンケアブランド・The Ordinaryによる「The price you choose to pay(あなたが選ぶ価格)」という取り組みだ。商品価格の選択制を実験的に導入しており、洗顔料と保湿液、ヒアルロン酸トリートメントの3商品が入った「The Daily Set」に対し、通常価格・23%オフ・40%オフという3つの価格が設定されている。2024年9月10日から10月31日まで、実店舗とオンラインショップが対象だ。

対象のセットに含まれる、Hyaluronic Acid 2% + B5とNatural Moisturizing Factors + HA|Image via Shutterstock

同社はこれを「コミュニティへの信頼に基づき、生活費が高騰する現状への認識を示す方法」であるとして、「通常の価格を支払うことは、この取り組みの継続的な実施を支持することに繋がります。そうした貢献により、良質なスキンケアをより多くの人に届けることができるのです」と、SNSウェブサイトにおいて伝えている。価格の選択制は、コミュニティの相互協力を生み出そうとしているのだ。

The Ordinaryは、情報の透明性が高いことで知られ、科学的な知見に基づいた製品を誠実な価格で提供することを目標に掲げている。その姿勢は、今回の価格選択制にも現れているだろう。

こうして3つの選択肢が与えられることで、消費者は「社会を相対的に捉えて、自分はどれくらい困窮しているだろうか。この商品にいくらまで払うことが妥当だろうか」と、一度立ち止まって考えることになる。どの価格で買うかよりも、その手や歩みを止めて、思考をめぐらせてからモノを買うという過程が、重要な示唆を持つはず。そのモノが持つ、自分そして社会にとっての価値を捉え直す機会になるからだ。

自分の肌を心地よい状態に保つこと。今日1日を、自信を持って過ごせるメイクをすること。そんな日常が、経済的に豊かな人だけの「贅沢なこと」にならぬように。一人ひとりが“誰か”を想って消費の選択をするとき、経済はもっと優しいものになるかもしれない。

【参照サイト】The Ordinary’s Choose-What-You-Pay Pricing|Stylus
【参照サイト】The Ordinary. 公式サイト
【参照サイト】DECIEM | Promotion Terms and Conditions
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