「私が投票する理由」を書いた手紙で、街中を飾る。NYの屋外展示が投票を後押し

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今年初め、2024年は世界的な「選挙イヤー」であることが話題になった。台湾総統選やロシア大統領選などは終了し、10月には日本で衆議院選挙、11月にアメリカで大統領選が行われる。

選挙期間中にはさまざまな方法で「投票にいこう」と呼びかけられている。例えば、EUでは憧れの場所を選挙会場にすることで有権者が「行きたい」と思うキャンペーンを実施したり、投票場所にアクセスしやすいようにレンタサイクルを無料で貸し出したり、クリエイティブな方法が注目された。

そんな中、アメリカでは「知らない人への手紙を書く」というシンプルな方法で、選挙への関心を高めるプロジェクトがある。今年9月に開催された、ニューヨークの気候変動イベントClimate Week NYC期間中の屋外会場で有権者が実際に書いた手紙が展示され、通りがかった人は読むことができるのだ。

Mail that Matters(見逃せない郵便)と題されたこの展示では、手紙はクリップで紐にとめられる。子どもたちが描いた絵やカラフルなイラストなどもあり、親しみやすい。内容は、具体的な政党名や候補者名は書かれておらず、政治的なメッセージではない。「誰に」投票するかではなく、「なぜ」自分が投票するのかが書かれているのだ。

例えば、「孫、ひ孫の世代が暮らしていける環境のために、わたしには今できること、つまり環境保護に取り組むリーダーに投票する責任を持つから」、「アメリカをはじめ多くの国で、気候変動による災害などが発生している中で、投票しないことはリスクが高すぎるから」など、それぞれの想いが伝えられている。

実際、同活動を継続的に実施しているVote Forwardの調査によると、自分が投票する理由を書いた手紙を送ると、受け手が投票する可能性が高まるという。手書きのメッセージは、個人的なエピソードと合わせて語られることで、非常に大きなインパクトを持つのだ。

この展示を企画した地元ニューヨークのローカルコレクティブStreet Works Earth/Make Justice Normal のアーティスト兼コミュニティオーガナイザーであるAnjali Deshmukh氏はImagine 5に対してコメントしている。

「気候変動に対するアクションはすべての人のためのものです。この手紙を目にすることで、私たち全員が、それぞれのやり方で気候変動に声をあげられることを伝えられると思います」

 

Make Justice Normal流、手紙を書く時のポイント

Make Justice Normalでは書き手の想いを引き出し、読み手に伝えるための手紙の書き方のポイントを4つあげている。より具体的で個人的なものにすることで、一人ひとりの想いを伝えることを意識しているのだ。

1. 特定の政党・候補者を記載しないこと
有権者は、「誰に」投票するのかではなく、「なぜ」投票するのかに影響を受ける。

2. 具体的に書くこと
一般論や政治問題ではなく、具体的な経験や特定の場所に焦点を当てる。

3. 事実ではなく感情を伝えること
多くの人が持つ希望、恐れ、愛情、不安、安心などの感情を伝える。思いを共有することで、自分とは違う考えやバックグラウンドを持つ人々とつながることができる。

4. 自分が投票する理由を伝えること
「投票しよう」と思ったきっかけになったエピソードを書く。投票することについて、どう感じるかを書く。

気候変動をはじめとする大きな課題を目の前にして、一人ではできることがないと思ったり、何か大きなアクションをしないといけないと思ったり、無力に感じることがあるかもしれない。

しかしMail that Mattersのように、一人ひとりが持つ個人的な想い、考え、経験などもとても大きな影響力を持つことも忘れてはいけない。小さくても、少しずつでも、何かすることに意味があるのだ。

【参照サイト】Mail that matters – The personal letters inspiring voters
【参照サイト】Vote Forward
【参照サイト】Climate Week NYC
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