「アンネ・フランクの家」がオランダ総選挙の投票所になったワケ

2023.12.01

Manami

第二次世界大戦中に、ナチスの迫害を逃れるために家族とともにアムステルダムの隠れ家で潜伏生活を送ったアンネ・フランク。隠れ家で書き続けた日記がのちに「アンネの日記」として出版され、世界的に知られるようになった。その家を利用した博物館「アンネ・フランクの家」は、オランダで特に人気のある博物館であり、ハイシーズンでは数ヶ月先、オフシーズンでも1・2週間先まで予約がいっぱいだ。

そんなアンネ・フランクの家が、2023年11月22日に行われたオランダの総選挙の際に、投票所として公開された。

アンネ・フランクの家|筆者撮影

投票者は当日、アンネの家を無料で訪れることができるが、観光客など通常の訪問者は入館することができない。その他、同じくアムステルダムにあるゴッホ美術館と、同市西部にあるウェスタモスキーのモスクも、22日には投票所となった。

アンネ・フランクの家の運営団体はEuronewsに対し「アンネ・フランクの家は、民主主義と法の支配が失われたときに何が起こりうるかを思い起こさせる場所のひとつです」と説明し、より多くの若者が投票に行くことを望むと表明した。

筆者も、最近アンネ・フランクの家を訪れた。唯一の生存者となった父親のインタビューから、普通の穏やかな父娘の生活を願っていた気持ちや、それが否応なく奪い去られた絶望、娘が二度と戻らないという現実を受け止めることの苦悩に、胸が締め付けられた。過去の歴史を振り返り、よりよい未来を考える上で最適の場所だと感じた。

オランダは、先進国の中でもトップクラスに高い投票率を維持している。例えば、前回の2021年の総選挙は、82.6%の投票率だった(※)

すでに高い投票率でありながらも、今回のように象徴的な意味を持つ場所を投票所として、有権者の行動を促すような取り組みを進めるのは、国として民主主義を「平和な社会を維持するために不可欠な仕組み」として大切にしているからだろう。

このように、特別な場所を投票所として使う取り組みはドイツなどでも行われており、普段は指揮者しか立つことのできないコンサートホールのステージや、ルフトハンザのフライトトレーニングセンターなどが投票所として利用された事例もあった。

一般的に、このようなアイデアは、行動科学の知見から望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチとして「ナッジ(行動経済学)」と呼ばれている。

日本では投票率の低さが問題になっているが、このような考え方をもっと積極的に取り入れることで、改善が図れる可能性もある。あなたが「思わず〇〇してしまう」ことは何だろうか。民主主義を維持するために不可欠な「選挙」を守るためのヒントは、意外と身近なところにあるかもしれない。

82.6 percent voter turnout in 2021 Dutch election
【参照サイト】Voters will be able to cast their ballot in Anne Frank House in the upcoming Dutch election
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Edited by Megumi

この記事を書いたライター

Manami

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Manami。福岡育ち、オランダ在住。製造業やコンサルティング会社勤務を経て独立。現在は、リサーチャー、ファシリテーター、ライターとして活動中。興味のあるキーワードは、サステナビリティ、地方創生、アート。サステナブルな取り組みを中心に、日々がちょっとでもワクワクするような情報を伝えていきたい。