「ミツバチのためのスーパーマーケット」。そう聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。
ニュージーランドの大手スーパーマーケットチェーン・Woolworthsは「ミツバチがいなければWoolworthsは存在しない。しかし、ミツバチも私たちに依存している」として、ミツバチのためのスーパーというキャンペーンを開始した。スーパーとミツバチ、いったいどんな関係があるのだろう。
ミツバチは、野生植物の90%、そして人間が食べる作物の75%の受粉を担っている。自然界にも人間の生活にも欠かせない存在であり、スーパーに並ぶ多くの野菜や果物などの食料品は、実はミツバチが花粉を運ぶことで実を結んでいるのである。
しかし、農薬の使用や気候変動の影響で、ミツバチの個体数は減少し、今や10種に1種が絶滅の危機に瀕している。この状況を受け、Woolworthsはミツバチのためのスーパーマーケットを立ち上げたわけだ。
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ミツバチのためのスーパーには、どんなものが並ぶのだろうか。そこには、養蜂家や学者の設計した苗床に、ミツバチの好きな色とりどりの花が植えられており、ミツバチたちは好きなだけ花の蜜を集めることができる。
そこには人間も入店可能だ。ミツバチのスーパーは人間にとって、インタラクティブに生物多様性を学べる場になる。ニュージーランドで最も信頼されている都市型養蜂事業のひとつ、Bees Up Topの熟練した養蜂家がミツバチについてレクチャーし、情報カードやゲームからミツバチの生態について学ぶことができる。さらに、植物のタネを購入し、ミツバチにやさしい庭を作ることもできる。自然界に存在する生命独自の生態系を学ぶことで、自然への畏敬の念を育むのだ。
Woolworthsは、ミツバチという隣人の「存在」を浮かび上がらせ、人間との関係を考え直させる。そして人間と自然の新たな関係を提案する。これには、マルチスピーシーズと呼ばれる思想も反映されているかもしれない。マルチスピーシーズとは、人間を含むあらゆる存在(動植物、微生物、想像上の生き物など)の絡まり、関わり合いとして世界を理解する考え方だ。自然と人間の「二元論」ではなく、両者の相互作用や共生を強調する。
人間の存在が自然環境に大きな影響を与えてしまっている時代。私たちが他の存在を想い、想像力を働かせる必要がある。そんなことを考えたとき、Woolworthsの取り組みを、あなたはどう思うだろうか。
【参照サイト】Woolworths 公式ホームページ
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Edited by Erika Tomiyama