倫理的なカカオ調達方法をオープンソース化。Tony’s Chocolonelyが業界に強制労働ゼロを呼びかけ

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身の回りにあるものには原材料があり、多くの人の手やプロセスを経て、私たちの手元に届けられる。しかし、それらがどこで誰によって作られたものなのか、日々の生活の中で気にしている人はあまり多くいないかもしれない。

好きなお菓子ランキングで必ずと言っていいほど上位にランクインする、チョコレート。その原料であるカカオ豆の生産量は世界全体で年間558万トンだ(※1)。主な生産国は開発途上国に多く、大手企業による搾取や児童労働、森林伐採といった課題を抱えている。

オランダのチョコレートメーカー・Tony’s Chocolonely(トニーズ・チョコロンリー)は、カカオ豆の生産の背景にある不平等をなくすためにオランダ人ジャーナリストのTeun(トニー)によって2005年に設立された。トニーズ・チョコロンリーでは、「追跡可能性(トレーサビリティ)」「より高いファームゲート価格(農家が通常支払われる価格)」「長期的なコミットメント」「農家との強力なパートナーシップ」「品質と生産性の向上」を彼らの5つの調達原則として掲げている。

さらに、彼らはこのサプライチェーンを公開し、強制労働ゼロを呼びかけるイニシアチブ「TONY’S OPEN CHAIN(トニーズオープンチェーン」を設立。他企業も彼らの調達原則に沿ったカカオ豆を調達できるようにオープンソース化し、2024年11月現在、20社が提携している。英国の大手スーパーマーケットチェーンであるWaitrose(ウェイトローズ)も、自社ブランドのチョコレートバー9種類にこのイニシアチブを通して調達したカカオを使用している。

トニーズオープンチェーンの仕組みは企業規模を拡大することなく、仲間を増やすことで課題解決の輪を広げ、多角的にアプローチできるということを証明し、業界に根付く不平等の現状に警鐘を鳴らしているのだ。

大手チョコレート会社の多くが、農家に支払う価格を非常に安価に設定しているという事実がある。現に、カカオ豆の主要生産国であるガーナやコートジボワールでは、カカオ農家の約90%が現在生計を立てるのに十分な収入を得ていない(※2)。

トニーズオープンチェーンは、5つの調達原則の実施者として現地のカカオ農家の協同組合と共に、より直接的に課題に取り組んでいる。両者は民主的にカカオの生産過程を管理し、共同の運営リソースを組み合わせることで、農家と企業の相互の利益を図っているのだ。

サプライチェーンの課題解決は生産者や企業でないと難しいことも多い。しかし私たち消費者にできることは環境や人権に配慮した商品を選び、購入することで彼らを応援することだ。「買い物による投票」で私たちもトニーズオープンチェーンの鎖の一つになれるのではないだろうか。

※1 総務省統計局「世界の統計2024」
※2 Oxfam International 「Chocolate giants reap huge profits as promises to improve farmaers’ incomes “ring hollow”」オックスファムの過去の調査
【参照サイト】tonysopenchain website
【参照サイト】edie.net website Waitrose partners with Tony’s Chocolonely for ethical cocoa sourcing initiative
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Edited by Megumi

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