各国がしのぎを削る、再生可能エネルギー市場。2023年には再エネの発電能力と発電量ともに中国が1位となり、インドでの再エネ導入が加速していることも注目されている(※1, 2)。日本では、再エネ電力比率が2021年度で約20.3%に止まり(※3)、エネルギー基本計画では2040年度までに再エネ比率が全体の約4〜5割となる見通しを示したものの、物価高騰を補う支援策も必要とされているのが現状だ(※4)。
このように成長市場として注目される再エネだが、災害が多い国では緊急時の自立的な電気供給方法としても重要だ。巨大インフラとして再エネ供給が進むと同時に、市民が自らの手で電気を作り使うことができるモノや仕組みが普及すれば、いざという時の支えになるだろう。
そんな商品の一例となりそうなのが、中国のコンピューターメーカー・Lenovoが開発した、太陽光パネル付きパソコン「Yoga Solar PC Concept」だ。2025年3月3日にスペイン・バルセロナで開催された世界最大規模のモバイル機器見本市・Mobile World Congress(MWC)2025でお披露目された。太陽光から電力への変換効率は24%と、平均的な変換効率である20%(※5)を超えている。

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バックコンタクトセル(BC)技術を活用し、パネル表面から配線をなくしてすべて裏面にまとめたことで、この変換率を実現できたという。直射日光による20分の充電で最大1時間の動画視聴が可能だ。ダイナミック・ソーラー・トラッキングシステムが、太陽光パネルの電圧と電流を常時チェックし、パソコンの使用に支障をきたさないよう充電設定を自動で調整するという。
BC技術自体は他社でも活用されているものだが、パソコンの形はそのままに太陽光パネルを統合するアイデアは類を見ない。その厚さは15ミリ、重さは1.22キロと、一般的なパソコンにも見劣りしない軽量さだ。
米CNETのJosh Goldman氏は、Yoga Solar PC Conceptについて「太陽光で稼働させるというよりも、充電を増やすもの」
と紹介。日照条件が揃わない環境では十分に発電できない可能性があり、従来の充電器が必要な場面もあるのが現状だ。
また同社は、手持ちのYogaシリーズを太陽光で充電できる外付けの発電パネル「Solar Power Kit for Yoga」も同時に発表した。カバンや屋外に取り付けることで日常の中で発電し、USB-C経由でパソコンの電源として使用できるという。
どちらの製品も、2025年3月時点で価格帯や販売予定は未定。しかし、一つのデバイスで発電と電力使用を完結させる道筋は見えたようだ。こうした技術が広がれば、災害時にも地域や市民が自ら電気を作り、暮らしを守る手立てとなるのではないだろうか。
※1 Country Rankings|International Renewable Energy Agency
※2 Renewable energy capacity worldwide by country 2023 | Statista
※3 7.再エネ|資源エネルギー庁
※4 再エネ投資、途上のインフレ対策 コスト膨張で支援急務|日本経済新聞
※5 太陽光発電の「変換効率」とは?計算方法や発電量を増やす方法を紹介 – EV DAYS
【参照サイト】Lenovo at MWC 2025: Expanding the Boundaries of AI-Powered Creativity, Productivity, and Innovation|Lenovo
【参照サイト】Lenovo Yoga Solar PC concept MWC 2025 launch|Lenovo YouTube
【参照サイト】20分の太陽光で1時間駆動、Lenovoが「Yoga Solar PC」コンセプトを発表 | XenoSpectrum
【参照サイト】Lenovo presenta un ordenador portátil que se carga con energía solar|ReasonWhy.
【参照サイト】Lenovoが太陽光充電ノートPCを発表 MWC 2025で公開 | PC Horizon
【参照サイト】再エネ比率、40年度に「4~5割程度」で調整 経産省|日本経済新聞
【関連記事】英国で太陽光パネルのサブスク開始。再エネ希望7,000世帯が順番待ちの人気サービスに
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