「女性の休日」が社会を動かす。“ジェンダー先進国“アイスランドの運動を描く映画が公開

Browse By

ジェンダー平等先進国として広く知られる、北欧のアイスランド。1980年には世界初の女性国家元首が選出され、2018年には男女間の賃金格差を違法とする「同一賃金証明法」を施行するなど画期的な改革を重ね、ジェンダーギャップ指数で16年連続の世界1位を記録。

2025年現在も、議員・企業役員共に女性の割合が50%近くまで増えるなど(※)、世界の国々の一歩先を行くあり方でジェンダー平等の議論をリードしている。

そんな現在のアイスランドの原動力となったのが、1975年10月24日に起きた「女性の休日(kvennafrí)」と呼ばれるムーブメントだ。その日、アイスランドの女性の9割が、仕事や家事、育児など、女性が関わるすべてを放棄。結果、銀行は閉鎖、電話は通じず、飛行機は欠航に。文字通り国が機能不全に陥り、「女性がいなければ、社会は一日たりとも回らない」という事実を証明してみせたのだ。

この知られざる運命の一日を追ったドキュメンタリー映画『女性の休日』が、50周年の節目を迎える2025年10月25日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国の劇場で順次公開される。

女性の休日 告知フライヤー

© 2024 Other Noises and Krumma Films.

誰にも成功の確信がなかった「女性の休日」は、どのように成し遂げられたのか。何が女性たちを突き動かしていったのか──。作中では、当事者たちのユーモアあふれる証言と貴重なアーカイブ映像、時折差し込まれるカラフルなアニメーションで、運命の1日に向けたストーリーが、ポップに、エモーショナルに語られる。

本作を手掛けたのは、エミー賞受賞歴を持つアメリカの監督、パメラ・ホーガン。彼女はアイスランド旅行中にこの物語と偶然出会い、強く心を動かされ映画化を決意したという。アウトサイダーだからこその視点を携え、現地の制作チームと協働することで、この知られざるムーブメントを50年の時を経てスクリーンに描き出した。

今でこそジェンダー先進国として知られるアイスランドだが、1970年代までは他国と同様に大きなジェンダー格差のある国だった。「女性の休日」が行われた1975年当時は、女性参政権は認められていたものの、国会議員に占める女性の割合はわずか5%、男女間の賃金格差も深刻な問題であった。

そうした状況を改善しようと、同年6月の女性会議で約300人の女性たちが決起。解雇されるリスクを連想させる「ストライキ」ではなく、誰もが参加しやすい「休日」と名付けたことで、全女性の90%が呼びかけに応じた。準備期間を経た10月24日当日は、首都レイキャビクに当時の人口の1割以上にあたる2万5,000人以上が集結し、銀行や工場が閉鎖。まさに女性同士の連帯=シスターフッドの力で、社会を大きく動かすきっかけを作り出したのだ。

『女性の休日』アニメーション

© 2024 Other Noises and Krumma Films.

その後も「女性の休日」は、主に同一賃金を求めてこれまでに6回行われてきた。直近の2023年には1975年以来となる終日ストライキが行われ、人口の4分の1となる約10万人が参加。すでに「ジェンダー先進国」と称される現在も、残された課題や格差を解消しようと、その勢いは続いている。

本作について監督のホーガン氏は、映画の公式サイトで次のように語っている。

7年前、家族でアイスランド旅行中にガイドブックに載っていたこの物語を発見しました。なぜ10人のうち9人の女性が同じことを同時にできたのか?そして、アイスランド社会を私たち全員の模範に変えた、この市民による前例のないムーブメントを、なぜ世界が知らなかったのか?(略)アメリカで公共放送のエグゼグティブプロデューサーとして働いた年月を通じて、私は女性の物語がどれだけ無視されてきたかを目の当たりにしました。しかし、その物語が語られると、大きく変わるのです。

監督:パメラ・ホーガン(映画『女性の休日』公式ウェブサイトより)

男女平等の実現という明確な目標のもと、ユーモアと柔らかさをもって連帯を実現した持続可能な社会運動のモデルである「女性の休日」。アクティビストだけでない“ごく普通の女性たち”が手を取り合って踏み出した一歩は、50年後の今なお、同じ課題に立ち向かおうとしている私たちに、大きな勇気とインスピレーションを与えてくれるに違いない。

そんな女性たちの勇気と力強さを、劇場で体感してみてはいかがだろうか。

タイトル 『女性の休日』(原題:The Day Iceland Stood Still)
制作年・場所 2024年・アイスランド・アメリカ
監督 パメラ・ホーガン
上映期間・劇場 こちらのページをご確認ください。

Global Gender Gap Report 2025

【参照サイト】女性の休日(公式サイト)
【参照サイト】あの日、アイスランドの多くの男性が“初めて”を経験した シスターフッドのやわらかな革命を描くドキュメンタリー 映画『女性の休日』
【関連記事】「これを平等と呼びますか?」“ジェンダー先進国“アイスランドの女性が一斉に仕事をやめた日
【関連記事】アイスランドの「1日7時間労働」実験。結果は?

FacebookX