私たちが生きるために欠かせない、食。それは、毎日の営みを支えるインフラでもあり、日々を豊かに彩る存在でもあります。
そんな食品の価格が、近年大幅に上がり続けています。2025年6月の消費者物価指数によれば、米やパンを含む穀類は前年同月比で30%近く価格が高騰しており、このほか、肉類、卵、野菜など、生活に身近な食材も同様に値段が上がっています。こうした状況に、ついつい食品を「高い」と思ってしまう人は少なくないでしょう。
しかし、そんな今だからこそ、私たちは食の「本当の価値」を改めて問い直してみる必要があるのではないでしょうか。今回IDEAS FOR GOODは、身近な食材の生産者や流通の現場を訪ね、食の価値と主体的に向き合うための体験シリーズイベントを企画しました。
第五回に訪れるのは、江戸時代から190年以上にわたり、天然醸造の醤油づくりを続けてきた群馬県安中市の醤油醸造所「有田屋」です。


微生物という小さな生命と土地の風土、職人の力、時間……目に見えないものが織りなされて生まれる発酵食品。普段、私たちは見えるものばかりを価値とみなしてしまいがちです。だからこそ、「見えないもの」から学ぶ体験が、いま大切なのかもしれません。
今回訪れる有田屋の湯浅家は、安中市で教会や日本初の図書館の設立など、代々、社会や文化、教育の発展にも貢献してきました。そして、大量生産一速醸の時代にありながら、天然醸造の製法にこだわり、大豆と小麦と塩と水、そして酵母や乳酸菌といった微生物の働きを見守りながら醤油の醸造を続けています。
当日は、醤油絞り体験のほか、7代目当主である湯浅康毅さんに醤油蔵と耕作放棄地を使った大豆畑をご案内いただきます。「目に見えないもの」のパワーが宿る場所で、見えない価値を感じ、向き合う。美しい山々と清らかな川が流れる安中で、改めて「発酵」について考えてみませんか?
第5回 イベント概要
日時:12月6日(土)11:00~16:00
場所:有田屋(群馬県安中市安中2-4-24)
参加費:5,500円(醤油絞り体験料込み。ランチ代込み)
定員:12名
スピーカー:湯浅康毅さん
お申し込み:peatixよりお申し込みください。
※ 製造場の見学ですので、汚れても良い服装でお越しください。
※ 外の見学場所もございますので、防寒してお越しください。
※前回までの体験シリーズイベントに参加された方は、peatix経由でお送りしているディスカウントコードをご使用いただけます。
当日の流れ
11:00:安中駅集合
11:30~12:30:醤油絞り
12:30~13:30:ランチタイム
13:30~15:00:醤油蔵と大豆畑見学
15:00~15:30:対話タイム
15:30~16:00:店舗見学、現地解散
ゲストスピーカーのご紹介
湯浅康毅 さん(有田屋7代目当主)

有田屋第7代当主・湯浅康毅(ゆあさこうき)。1832年創業の天然醸造醤油蔵元「有田屋」を継承し、伝統製法と革新を融合させた醤油文化の再生に取り組む。天然醸造群馬醤油や燻製醤油など新商品を開発し、国内外のシェフやバイヤーと連携して「安中テロワール」を発信。地域文化・教育・食を結ぶ取り組みも積極的に行っている。
こんな方におすすめ
- 発酵食品に関心がある人
- 普段食べる身近な食べ物の生産の現場に関心がある方
- 安いものを選びがちな社会の風潮に疑問を感じている人
- 多様な価値観に触れ、「食との向き合い方」を深めていきたい方
- 食を通じて、自分自身や社会、地球との関係性をより豊かにしていきたい方
- 実践の裏側にあるリアルな葛藤や課題を通し、主体的に学ぶことに興味がある方
- 「ソリューション」ではなく、自分の中に残り続ける「問い」を求めている方
- 食にかかわる実践者になるためのヒントが欲しい方
- このほか、食べることがお好きな方などどなたでも大歓迎です!
今後のプログラム(Vol.3以降)
Vol.3 「卵とアニマルウェルフェア」
訪問先:Unshelled(東京農工大学)、ほか東京農工大学内の施設|11月15日(土)18:00〜20:00|参加費 一般チケット5,500円/IDEAS FOR GOOD応援!チケット6,000円
Vol.4「生き物との関係性を編み直す。生産現場で探る、豊かな食」
訪問先:米農家・牧場・ジビエ猟師・野菜農家など(1泊2日のフィールドツアー・千葉県御宿町近郊)|11月22-23日(土・日)|参加費 45,000円
Vol.6「誰と、何を、どう食べる?食べながら思い描く、未来の食卓」
訪問先:タノバ食堂(大澤山 龍雲寺)|12月21日(日)15:00〜18:00予定)|参加費:自由価格制
※各回10〜12名の少人数制。単発参加・連続参加のどちらとも大歓迎です。
※各回の日程・お申し込みは、順次このページで公開していきます。
イベントシリーズについて
今回は、普段IDEAS FOR GOODの記事で発信しているような「ソーシャルグッド」な取り組みを情報として聞くだけではありません。世間的に“良い”とされるモノを生み出すための葛藤や、それを選ぶ難しさ、より良いを追求したいけれどできない背景にあるもの……生産の現場で人々が日々抱える戸惑いや本音、ジレンマといった「リアルな声」にも耳を傾けていきます。
各回では、訪問先での体験やインプットを受けてそれぞれがどう感じたか、目の前の食の価値をどう定義するかといった問いについて、対話やワークショップを行う時間も設けます。IDEAS FOR GOOD編集部メンバーが世界中のアイデアをリサーチするなかで得た食にまつわるさまざまな情報、生産者の声、そして参加者の皆さんの声……。唯一無二の答えはありませんが、参加する人それぞれが言葉を交わし合うことで、新たな気づき、さらなる問いが生まれるのではないかと私たちは考えています。
目の前の一皿が、どんな土で育ち、誰の手に支えられ、どんな旅をしてここにやって来たのか。その物語を紐解きながら、私たちの「いただきます」を見つめ直す時間を、一緒に過ごしませんか。
共に旅する案内人のご紹介
伊藤智子(いとう ともこ):IDEAS FOR GOOD編集部
地元である大阪の都市部を離れ、数年前に千葉の里山に移住。生態系の一部としての人間のあり方を模索すべく、山の中の古民家でシェアハウス生活を行う。自分が口にするものの生産現場を知るため、魚、肉、米、野菜、牛乳といった生産の最前線で農家の手伝いをしながら、カフェの運営やまちのにぎわいを取り戻すべく地域の活動にも取り組んでいる。最近のテーマは、目の前のものをじっくり感じ、味わい尽くすこと。曖昧なもの、わかりにくいものこそ大事にしたい。
相馬素美(そうま もとみ):IDEAS FOR GOOD編集部
1996年横浜出身。東京音楽大学器楽専攻鍵盤楽器(ピアノ科)、同大学院伴奏研究領域にて研鑽を積む。2020年にハーチ株式会社に入社、IDEAS FOR GOOD、Circular Yokohama等にてサステナビリティに関する幅広いトピックの取材・執筆のほか、企業向けのサステナビリティ研修、展示、地域イベント、ワークショップ等の企画運営を担当。2023年、半年間アイルランドに滞在し、語学研鑽や取材活動を行う。2025年5月にUnshelledを取材し、記事を執筆。
▶️Peatixからお申し込みください。
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【参照サイト】株式会社 有田屋






