2025年11月25日から26日にかけて横浜で開催されたアジア・スマートシティ会議2025(以下、ASCC2025)において、「アジア循環型都市宣言制度(Asian Circular Cities Declaration)」の設立が発表された。
ASCC2025では、アジア都市の首長らからの支援の呼びかけと2日間の各セッションでの議論に応じ、世界最大級の自治体ネットワークであるイクレイ(ICLEI)の日本事務所・イクレイ日本が本制度の設立を正式に発表。横浜市が第1号都市として、山中竹春市長が宣言に署名した。
山中市長は、「『アジア循環型都市宣言制度』に対し、多くのパートナーから高い期待が寄せられています。横浜市は、より多くの都市に参加を呼びかけ、この動きをアジア全域に拡大するために精力的に取り組んでまいります」と述べた。

横浜市長 山中竹春氏
この新たな宣言制度は、2020年に設立された「欧州循環型都市宣言制度(European Circular Cities Declaration)」の枠組みを参考に設立された。欧州での同宣言には、2025年現在90の欧州都市が参加し、地域におけるサーキュラーエコノミーへの移行に向けた目標・戦略の策定や、宣言のネットワークを通じた優良事例の共有などを通じて、循環型社会への移行に向けた都市間連携を進めている。
一方アジアの都市でも、都市化の進展に伴う資源消費や廃棄物排出量の増加が大きな課題となる中、かねてより広域的な知見共有や協力の仕組みが求められていた。こうした国際動向を踏まえ、横浜市はアジアの各都市におけるサーキュラーエコノミーへの移行に向けた都市間連携を強化する必要性を提起。枠組みの発足に主導的な役割を果たし、今回の宣言制度創設につながった。

ASCC2025の様子
宣言制度の創設には、すでにアジアの複数の都市が賛同している。ASCC2025のオープニングセッションでは、横浜市、バンコク都(タイ)、セブ市(フィリピン)、ダナン市(ベトナム)、マカッサル市(インドネシア)の首長ら、シンガポール国家開発省 暮らしやすい都市センターの代表が、「アジア循環型都市宣言制度」の設立に向けた公開書簡に署名し、アジア都市の循環型社会への移行を支援するよう国際機関や関係者に共同で呼びかけた。署名には、アジア太平洋地域の都市・自治体ネットワークであるCityNetも立会った。
この呼びかけに、サーキュラーエコノミー推進の先駆的都市の一つであるアムステルダム市の担当副市長であるジータ・ペルス氏は「アムステルダムは、大陸を越えた循環型都市の連携という横浜のビジョンを強く支持する」と、欧州とアジアの連携への期待を表明した。

アジア各都市首長からのコメントの様子
アジア・スマートシティ会議は、2012年から横浜市が主催する国際会議だ。都市や国際機関、政府機関、学術機関、民間セクター等の代表者が一堂に会し、環境と経済を両立させる持続可能な都市開発について議論することを目的に毎年開催されてきた。14回目を迎えた2025年は、サーキュラーエコノミーへの移行をテーマに開催され、多様なステークホルダーが循環型都市の実現に向けた課題や展望を議論した。
ASCC2025の最後には、循環型都市の実現に向けた強いコミットメントの反映として、このアジア・スマートシティ会議を来年から「アジア太平洋循環型都市フォーラム(APCC Forum)」として刷新することも発表された。
第一回目のAPCCフォーラムは2026年9月2日から4日、2027年は横浜国際園芸博覧会(GREENxEXPO 2027)の期間中である2027年8月31日から9月2日にかけて開催される予定だ。
400万人近い人口を抱え、多数の企業や学術機関なども集積する大都市・横浜。今回の宣言設立は、同市が2000年代から実施してきた家庭廃棄物削減の実績や、長年の国際交流で培ったアジア各都市とのネットワークを背景に実現されたものだ。
今後もさなるリーダーシップを発揮し、この都市間連携がアジア全体、さらにはグローバルな循環経済への移行に向けたうねりを生み出すことを期待したい。
【参照サイト】Asian Circular Cities Declaration Launched — Yokohama Leads as a First Signatory at ASCC 2025
【参照サイト】循環型都市を推進する新たな国際枠組みが始動 アジア版「循環型都市宣言制度」を創設 ~横浜市が第1号都市として署名~
【参照サイト】Calling for Signatories: Asian Circular Cities Declaration(ACCD)






