山や川、森林、ミツバチ──近年、国レベルで人間以外の生物やフィールドに法的な「権利」を与えたり、企業が「自然」を取締役に任命したりといった動きが世界中で広がっている。これは、人間中心主義的なアプローチにより環境破壊や資源の搾取を繰り返してきた近代社会への反省の態度である。さらに、新たな仕組みとしていかに人間以外の存在を招き入れられるのかを模索する挑戦でもある。
その新たな一歩が、トルコのはちみつブランドによる一風変わった求人である。その役職名は「ミツバチの権利大使(Bee Rights Ambassador)」だ。
募集を出したのは、はちみつの生産量が世界3位の同国で1979年から続くはちみつブランド「アナバルザ・バル」。ミツバチとその生態系を保全・再生することを目指す「ミツバチ万歳部門(Hooray for the Bees)」の設立に向けて、人材を募っている。
「ミツバチの権利大使」に課される役割は多岐にわたる。第一の任務は、ミツバチの切実なニーズを汲み取り、その権利を主張する「代弁者」として、人間との架け橋を強固にすることだ。
さらに、国連などが提唱する国際的なミツバチの健康に関する基準を国内の養蜂現場に取り入れることや、環境再生型農業の推進など、現場での作業とビジネスとしての戦略立案の両方に関する職務が求められている。
資質として「現場視点とデスクワークのバランス」が明記されている点からも、単なる理想論に終始せず、ビジネスの実務において生命の尊厳をいかに担保するか、という実践的な姿勢が見て取れる。
アナバルザ・バルは「ミツバチがいるところに、命がある(Where there are bees, there is life)」というビジョンを掲げている。その担保のために、当事者であるミツバチの権利を部署や役職の設置を通して守ろうとするのは、ごく自然な流れであろう。
人間以外の存在が明確にステークホルダーとして目の前に現れたとき、意思決定の基準は大きく変わるはずだ。企業活動を行ううえで、自分たちは誰の「声」に耳を傾けなければいけないのか。その問いが共有されることが、起こすべき変化への第一歩かもしれない。
【参照サイト】Turkish honey brand is hiring a bee rights ambassador
【参照サイト】Hooray for the Bees Department Manager!
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