建物を壊さず「組み立て直す」デザインへ。CO2排出を最大73%削減する、フィンランド発モジュール式建築

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日本と欧米で、どちらが建物を長く使い続けているかご存じだろうか──実は、欧米の方が長い。日本では建設から消滅までの期間は、木造・非木造住宅ともに30〜40年ほどであり、欧米に比べてかなり使用期間が短いのだ(※1)

さらに、建設工事で排出される廃棄物は全産業廃棄物の約2割を占め、最終処分量では約4割を占める(※2)。つまり日本は、地震や高温多湿の環境などの制約がある中で、建材の有効な使い方を見出す余地を抱えているのだ。

この課題に対し解決のヒントを与えてくれるのが、モジュール式建築だ。モジュール式建築とは、工場で主要なモジュール(部屋の単位)を製造し、現場でそれらを組み合わせる建築方法のこと。仮設住宅や工事現場の簡素なプレハブの印象が強いかもしれないが、近年住宅やホテルなどとして積極的に活用される場が増えている。短工期・低コスト・柔軟な設計といった利点に加え、環境負荷を抑えた建築方法としても評価され始めているのだ。

そんなモジュール建築を、「リースモデル」で展開し注目を集めている企業が、フィンランドのParmaco(パルマコ)だ。建設・解体を繰り返すのではなく、利用者のニーズに応じてモジュール式の建物を分解・移動し、再利用できるのが最大の特徴だ。

あらかじめモジュール化された建物は、設置や撤去が効率的で、用途変更や再利用も容易である。たとえば、同国エスポー市にある保育園は、建物の84%がかつて学校として使用されていたモジュール建築を再利用したもの。着工から15週間で、庭の工事を含む保育園の建物全体が完成したという。

2023年、フィンランド北部オウル市で急成長を遂げるハウキプタア地域に、6ヶ月で完成したデイケアセンター|Image via Parmaco

Parmacoの建物は不要になるまで、平均約7年のリース期間を経て、再整備のうえ次の利用者へと引き継がれていく。こうした建材・建築物の「再配置」により建築資源の長寿命化と循環型の利用が進み、廃棄物の発生も最小限に抑えられる。

環境面での実際の効果も出ている。Parmacoのモジュール式建築は、現場で建設する方法と比較して最大73%のCO2排出量を削減できる(※3)。移設の際には、大がかりな工事をしなくても新たな用途に応じて壁やフロア構成を柔軟に変更でき、企業にとってコスト削減の効果ももたらすだろう。

これからの社会では、一つの場所で、もしくは場所を変えながら「建物をいかに長く使い続けるか」を問う視点が求められている。求めるデザインを短期に実現する柔軟さと、環境負荷の軽減を兼ね備えたParmacoの建築モデル──彼らのスタイルをそのまま採用することは難しいかもしれないが、日本でも通念を見直す糸口になるはずだ。

※1, 2 建築解体廃棄物リサイクルプログラム|国土交通省
※3 Parmaco’s dynamic circular buildings reduce material emissions SWECO

【参照サイト】Parmaco
【参照サイト】Parmaco Group increases building use by leasing modular buildings|Sitra
【参照サイト】Parmaco’s dynamic circular buildings reduce material emissions|SWECO
【参照サイト】Moduuli­­rakennukset
【関連記事】消費しなくてもいい街、ヘルシンキ。循環型社会を支える「フィンランドらしい」文化のあり方

Edited by Natsuki

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