IDEAS FOR GOOD2.0 危機を希望に。読者とともに「新しいメディアのかたち」をつくりたい〜IDEAS FOR GOODはクラウドファンディングに挑戦しています〜
2015年から、社会を「もっと」よくするアイデアを届けてきたIDEAS FOR GOOD。けれど、世界も、メディアのあり方も、この数年で大きく変わりました。私たちもまた「伝える」だけでは届かない時代の中で、迷いながら、探りながら、新しいメディアのかたちを模索しています。完璧ではない。でも、未完成だからこそ、まだできることがある。このメディアを存続させ、次の時代へと手渡していくために──どうか、この挑戦にご参加いただけたら嬉しいです。
▶️クラウドファンディングページも覗いてみてください。
近年注目される、海藻。それは、単に健康志向が広がっているからではない。気候変動対策、生物多様性、プラスチックに代わるバイオ素材、バイオ燃料など、多岐にわたる分野においてその可能性に熱視線が注がれているのだ。
こうしてニーズが高まる中、日本では合同会社シーベジタブルが静岡県西伊豆町で陸上・海面での海藻養殖に取り組むなど、国内外で海藻を養殖する取り組みが増えている。一方、これまで洋上での海藻養殖は、海上の船などとの接触を避けるため、交通量の多い航路から離れた場所を確保しなくてはならないことが課題となっていた。
そんな中、2025年7月、北海の沖合でオランダの非営利団体・North Sea Farmersが、世界で初めて「洋上風力発電所内で」商用の海藻収穫に成功した。タービンの間にあるスペースを養殖場とすることで、航路を妨げない生産が実現したのだ。2022年に構想が始まり、2024年10月に最初の海藻が植え付けられ、3年がかりの成果だった。
通常、海藻養殖をするならば、沖合より陸に近い沿岸部で実施した方が、水深が浅いため資材も少なく済み効率が良い。しかし沿岸部は人の往来が多いことや、土地の需要も高いことから、North Sea Farmersは沖合に近いエリアで大型海藻養殖に着手。タービンの間に、海底に固定できる縦50メートル・横3メートルの大型網を設置し、そこで育てられる海藻は数ヶ月にわたって肥料も農薬もなしで自然と成長するという。
チームの一人である水産養殖コンサルタントのマイク・サモン氏はEuronewsに対し「海藻は驚くほど早く、そして良い状態に育ちました。今後もこの方法はうまくいくはずです」
と、前向きにコメント。今回の収穫はまだ実験的な段階にすぎないが、2035年までに養殖面積を1,000ヘクタールに拡大し、少なくとも年間1万トンの海藻を収穫するという目標に向けて、良い走り出しとなったようだ。

Image via North Sea Farmers
このプロジェクトは、Amazonの「Right Now Climate Fund」から200万ユーロ(約3億4,600万円)の資金提供を受けて実現。海藻は陸上植物よりも速く成長し、海水から二酸化炭素を吸収することから、同プロジェクトでも養殖方法の検証だけでなく、海藻による炭素回収・貯留についての研究も行っているのだ。今後、さらに海藻が秘める可能性が明らかになるだろう。
風力発電のもとで海藻を育てるという、新たな発想。同じ場所で争うことなく2つの恵みを育む仕組みは、資源を奪い合うのではなく重ね合わせるという未来の社会へのヒントを示しているのかもしれない。
【参照サイト】First-ever harvest at pioneering North Sea seaweed farm, funded by Amazon’s Right Now Climate Fund|North Sea Farmers
【参照サイト】NORTH SEA FARM #1|North Sea Farmers
【参照サイト】Same space, two harvests: Euronews visits the first seaweed farm at an offshore wind park|Euronews
【参照サイト】Netherlands Wind Farm Seaweed Project Completes First Commercial Harvest in North Sea|Happy Eco News
【参照サイト】Amazon’s $100m Right Now Climate Fund: The latest on our nature-based investments across Europe|Amazon
【参照サイト】世界初!洋上風力発電しながら、海藻を養殖し、炭素回収・貯留へ
【関連記事】「藻」で牛のメタンガスを減らす。世界が注目するスウェーデンの気候変動テック
【関連記事】気候危機時代の食を、江戸の暮らしから考える。これからの食文化とそれを支える仕組みとは
Featured image created with Midjourney (AI)