洋上風力タービンが、サンゴの棲み処に。デンマーク・オーステッドの海洋再生プロジェクト

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多様な生物のすみかであるサンゴ礁。近年、サンゴ礁の衰退が各地で深刻化しており、その原因のひとつが、温暖化などによるサンゴの白化現象だと言われている。

白化現象とは、サンゴが褐虫藻を失うことにより、サンゴの白い骨格が透けて見える現象だ。海水温が上昇すると褐虫藻に異常が起き、白化を引き起こす。

白化を防ぐには温暖化を抑制することが大切だが、サンゴを高水温の場所から快適な水温の場所へと移動させることで、白化のリスクを減らそうとしている企業もある。1991年に世界初の洋上風力発電所を建設した、デンマークの再生可能エネルギー企業ことオーステッドだ。

同社が検討しているサンゴの移動先は、なんと洋上風力タービンの基礎部分だ。

サンゴは通常、光が届く浅い海に生息しており、海面水温が上昇すると白化しやすくなる。風力タービンの基礎部分はより深い場所にあるため、海面の温かい水と深海の冷たい水が混ざり、サンゴにとって快適な水温になるのではないかという考えだ。もちろん、適度な光が届くくらいの深さにするよう配慮する。

同社は、海岸にある余剰なサンゴの卵を集め、実験室でサンゴの幼生になるまで育ててから、風力タービンに持っていく。サンゴは海がピンクに染まるほど多くの卵を産むが、そのうち幼生になるのは一部だ。大量の卵の一部を集めるだけなので、サンゴの繁殖に影響を及ぼすことはないという。

風力タービンに持っていった後は、幼生を囲いの中に入れ、基礎部分に着床させる。基礎部分は、サンゴ礁の立体的な構造が人工的に再現された場所と言えるだろう。

同社は2022年4月から8月にかけて、台湾のパートナーと協力し、サンゴを風力タービンで育てられるか実証実験を行う。台湾の大彰化洋上風力発電所にある4台の風力タービンに、幼生を放流する計画だ。「波が強くても着床するのか」「海がやや濁っていても健全なサンゴが育つのか」といった部分に注視するという。

風力発電の設備が気候変動対策になるだけでなく、生物多様性の保全にも寄与するとしたら、その重要性がより強く認識されるようになるのではないだろうか。

洋上風力発電において25%の市場シェアを持つ同社(※1)が、海洋環境保全の面でも業界をリードすることを期待したい。

※1 オーステッドについて | Ørsted オーステッド
【参照サイト】Using Wind Turbines to Support Coral Restoration | Ørsted
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